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ボクは、ボクの希望(エルピス)だけがあればいいのサ! ●2004/01現在、「機動戦士ガンダムTHE ORIGIN」を鋭意執筆中の安彦先生ですが、久々の新作報道が流れたのが2003年の初夏の頃だったでしょうか。このニュースを見たときは正直驚きました。だってORIGIN連載中なのに、他の作品描いてる時間なんてあるの・・・!?って普通は思いますからね。で、いつ頃「アレクサンドロス」を描いていたのか調査してみました。以下が「アレク・・・」発売開始(2003/07/30)頃までのガンダムエース連載ページ数の記録です。
記録を見る限り、隔月連載に移行した時点で月間50枚前後描かれているのですが、月刊連載に移行し、7月号(5/26刊)からページ数が激減、10月号(8/26刊)から元の状態に戻っています。また、隔月でも2003年1月号(2002/11/26刊)頃に一時的にページ数が落ちていることから、おそらく2002年11月頃から徐々に描き始め、2003年5月〜7月に最後の仕上げラッシュがあったのではないかと、推測します。つまり、8ヶ月程度の期間で「アレク・・・」の236頁+表紙+扉絵を描いたものと思われす。(あくまで推測ですので実際どうなのかは分かりませんが)・・・しかし、それだけの仕事量をやってのけてしまうのだから、改めて安彦氏の底知れぬパワーを見せられた思いです。いや、マジ、スッゲェ! 新作ニュースを見た当初、NHK出版から出るということもあって、「ジャンヌ」・「イエス」に続くフルカラー版コミックなのか!?と、期待は更に高まっていたのですが、残念ながらそこのところはモノクロ仕様でした。流石にフルカラーだと時間と手間がかかりすぎるようです。でも、ファンとしてはフルカラー版を読みたかったところ・・・。その点はホントに残念です。 ちなみに、この作品はNHKの企画スペシャル番組「文明の道」と連動して描かれたコミック版です。この系列作品では星野之宣氏の「クビライ」が2003年12月に刊行され、二大作家の競作と銘打っております。 物語はアレクサンドロスの友人の一人、「リュシマコス」が狂言回しとなり、アレクサンドロスの一生を追憶していくスタイルです。初っ端から「人の名前」や「土地の固有名詞」のオンパレードに加え、少ないページ数にその一生を収めるためか、物語の進行スピードが非常に早く、一読者としてついて行くのが厳しかったですね。特にギリシャ系の名前って似たようなのばかりで覚えにくいし、登場人物も沢山いるので混乱しきり。そういや学生の頃も世界史の人名覚えンのに苦労したなあ・・・苦手だ。 というわけで、序盤はページを行ったり来たりしながら、名前とキャラの顔を確認しつつ、アレクサンドロスの侵攻ルートも、ページ先頭のカラーページの地図と参照しながら確認するので、なかなか前に進まない。(地図は折込別紙にしてくれると確認しやすかったかなあ〜) 序盤の登場人物、時代背景などの情報把握に時間がかかるため、比較的パ〜ッと読み進めるコミックに慣れた方には厳しいかも・・・というか、きっと振り落とされて”ツマンネ”ってなっちゃうンだろうな・・・。しかし、これは歴史系コミックにツキモノな障壁なので、しょうがない。ここを我慢して乗り越えてしまえば、かなりこの物語を楽しめるはずです。安彦氏もそのへん心得ているのか、いないのか、ちょっと説明調子で苦しくなってきた頃に戦闘シーンを入れて盛り上げてくれています。 その戦闘シーンですが、この物語で主に語られるのが、アレクサンドロスの半生に渡る遠征ですから、まるごと一冊、冒頭からラストシーンまでほとんど戦争ばっかりになってしまっています。しかし、その戦争シーンも飽きさせない工夫がされています。特にダレイオスとの緒戦、雨の中檄を飛ばすアレクサンドロスから、ダレイオスのいるイソッスに至るまでジリジリと進軍するなか次々と命令を下すアレク。そして、一気に激突する両軍兵士たち。数ページに渡るこの絶妙な”緩急”と迫力ある描写はみごとです。また、序盤のグラニコス川の最初の戦闘シーンで、アレク達が川に飛び込む(36P)躍動感、後半ムルタン攻めでただ一人突撃するアレクの無謀ともいえる暴走。全編を通して、戦闘シーンが多いですが、見所は満載で飽きることはないでしょう。 また、アレクサンドロスも偉大な人のようなイメージがありますが(私自身ほとんど名前しか知らなかったけど・・・)、あるときは酒におぼれ、猜疑心やプライドを守るため忠臣だった者を殺したり、後先考えずに街を破壊したりと、完璧とは程遠い自惚れ屋で酷薄な欠陥の多い人物像として描かれています。しかし、その一方で勇猛果敢に率先して戦い、周囲の兵をまとめ上げる力量や、すばやい判断力と行動力、時には敵の妻子を助ける慈悲心や、敵国の宗教を受け入れる寛容さも持ち合わせる人としても描かれ、短い一生の間に変わっていくアレクサンドロスを、少ないページ数ながら工夫して表現されています。個人的には、後半どんどん壊れて暴走していくアレクサンドロスの表情はよく描けていると思いますね。特に一人突撃していく199Pの表情がよかったな。 そしてラストシーン、アレクの短い生涯と同じように駆け抜けていくリュシマコス。時代に愛されたアレクのようになれなかった、そして誰もそうなれないことを悟っているリュシマコスがどこか切なくていいですね。余談ですが、後半リュシマコスがバラモン僧と話す場面、仏陀の名前がちらりと出てきますが、たしかにブッダとアレクの二人がもし出会っていたら・・・と思うと(時代が200年くらいちがうか?)、もしも話だけれど、きっと歴史が変わったことだろうなあ。 本編を読み通して惜しむらくは、限られた誌面の中で歴史の流れを追うばかりに、数多い登場人物の心の動きを突き詰めて表現できなかったところか。全体的にハイスピードで進行するので、端折った感は否めない。去る2003/12/07に行われた「星野之宣氏スペシャルトーク&サイン会」にゲスト出演した安彦氏も、出版社とページ数についてやり取りがあり(240ページにまとめる条件だった)、「本当は1000ページあればもっとちゃんと描けたと思う。終わってからもうちょっと描きこみたかったなーというのはある」とコメントされています。(サイン会安彦氏コメントについてはYahoo!掲示板>「安彦良和さんに絶賛の嵐を!」スレ809番Gland_Bleu さんのレポートより引用させていただきました。) 今回は、序盤の苦しさ、物語の端折り、ハイコストを考慮し、星3つ。しかし、その他の関連資料を参照しながら読み込んだり、躍動感あふれるキャラクターや迫力な戦闘シーンを眺めたり、安彦氏の遊びコマを探してみたりと見所は満載、長く楽しめる作品ではないでしょうか。ファンは必見ですよ。 2004/01/12 shinji
【あらすじ】 ●紀元前340年ごろの人物「アレクサンドロス」、アレキサンダー大王としても知られる彼の、大望に向かって突き進む青年時代を、かつての友人であるリュシマコスの視点で描く。 【簡単コミックデータ】 ●2004/01現在、新品購入可能です。大きな書店なら店頭に置いていることもあるでしょう。しかし、たいていの場合、取り寄せるケースが多いかと思われます。現在も在庫はあるようですのでネット通販で買うほうが到着は早いかもしれません。中古も安ければ500円くらいから見かけますが、安彦先生の今後のご活躍のためにも新規購入してあげてください。
【関連メディア】
●紹介文中でも書きましたが、「文明の道」シリーズには第2巻として「クビライ」という作品が刊行れています。著者は星野之宣氏。競作企画ですが、勝敗は別として読み比べてみるのも一興かと。 ●その他・・・「文明の道」シリーズの関連資料としてNHK出版から刊行されているのが以下の書籍です。この書籍は2004/01現在第三巻まで刊行中。この書籍は未読なのですが、資料的には画像が豊富なものの、内容は入門的なものとか・・・。番組のDVD版も販売されているようですので、以下にリンクしておきます。
・アレクサンドロスの時代(第1巻)―文明の道 NHKスペシャル NHK「文明の道」プロジェクト (著), 森谷 公俊 (著) ●もっとつっこんだ内容としてオススメなのは以下の書籍。 ・アレクサンドロス大王東征記〈上〉(下)―付インド誌 岩波文庫 フラウィオス アッリアノス (著), 大牟田 章 (翻訳) ●2005年2月5日より映画「アレキサンダー」が日本でも公開されます。監督はプラトーンやサルバドルなんかを撮ったオリバー・ストーン。この作品色々言われていますが、私はまだ未見なんですけど、いずれDVDが出たら安彦アレクと見比べたいと思います。 ■ALEXANDER:アレキサンダー 【表紙について】
●表紙と見開きカラーページのイラストは、紀元前1〜2世紀のイタリア・ポンペイ遺跡のモザイク壁画をモデルにしている。それが以下の写真だ。ちょっと写真が見切れていますが安彦氏のイラストと是非見比べて欲しい。
【その他】
一言でいうと全編通して非常に時間が長く感じれられた。もっと短くしてスピーディーに展開させたほうが作品として出来はよかったのではないか?なぜか印象に残るのは中途半端なエッチシーンと混乱した戦場くらい。物語としてはさほど深みのあるストーリーではなかった。船がずらりと並ぶCGシーンもおそらく映画館で見たならばスゲーなあ、と思うだろうけど、CGはTV画面で見るといきなり粗が出てしまうから・・・。スケール感が半減以下になってしまうのが悲しい。 良かったところはパリス王子のヘタレっぷり。かっこつけて略奪した相手の夫と決闘するのだがボコられて逃げ出し、お兄ちゃんに助けてもらうところが一番面白かった。でもこのパリス王子は後半レゴラスばりに弓の名手になってしまうので、そりゃねーだろ?って落胆してしまう。 あと、ブラピは筋骨隆々にビルドアップした身体を披露。向かうところ敵なし的なヒーローを演じているのがどうにも鼻につく。美形なだけになんか悔しい。彼の役柄アキレスは戦いに生きるひとなのだが、コレも最後には戦場で出会う人たちによって愛に目覚めるところがこの作品の肝なのだろう。 この作品を見るなら先にロード・オブ・ザ・リングスを少しでも見ておくと、作品の似通ったところが結構楽しめるかもです。 ■トロイ公式ページ |