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●この「BATEREN/南蛮西遊記・序章」は、2002年のワールドカップ関連商品の一つとして、アディダスから発売されたアンソロジー・コミック「adidas MANGA FEVER」の一作品として発表されました。このアンソロ・コミックはスポンサーである、アディダスの宣伝も兼ねている(普通に考えてそうだろうと推測される)ため、三本線の靴やら、サッカーボールなんぞが各作品内に何気に挿入されているのと同時に、作品テーマもサッカーを意識して描かれているものが多いです。そして何より、世界中の有名どころの漫画家を一堂に集めている点が凄いのではないでしょうか? 今後こういった企画が持ち上がるかどうかもわからない今、貴重な一冊であると言えましょう。 オレの購入前の興味の中心は、このサッカーをテーマにしたアンソロ・コミックの中で、安彦氏がどのような作品を描いたのか?というところにつきました。まさか、あのやっさんが、サッカー漫画なんて書かないだろう・・・「Cコート」や「ネオデビルマン」のケースもあるしなあ・・・もしかしたら全然関係なさそうな作品を描いてるんじゃねーのか?と思っていましたが、案の定サッカーとはほど遠い、というか全然関係ないじゃん!?といえる作品が載っていました。やっぱ、安彦氏らしいなあ・・・(笑) さて、この作品。他の作品を最初から順に読んできた状態だとまず、扉画が時代劇風なので、ンん??サッカーと関係あんのか・・・?となり、次ページにドドーンと裸体が晒されるので更に、ハア??と異様な感覚に陥ります。おそらくこの最初の2頁は、このアンソロの中ではかなりインパクトがあったのではないでしょうか? 今まで安彦氏を知らなかった人も、なんじゃこりゃ!?と、作品の著者名を確認しなおしたことでしょう。果たして安彦先生は狙ってやったのか、遊びでやったのか・・・判断に悩むところです。 作品としては、24ページあるにも関わらず、一作品の完結した物語として作られていません・・・どちらかというと、タイトルに「序章」と銘打っている通り、これから始まる(であろう)本編の雰囲気を味わう為のイントロといった感じ。それにしても、主人公であろうはずの”天草四郎時貞”が妙に引っ込んでいて(性格設定もあるんだろうけど)、脇役である”武蔵”の濃い〜カンジや、冒頭の謎の女性の印象が強く、序章から主人公の活躍が危ぶまれる。本編があるとするなら、登場人物の性格付けなど再構築する必要性は強いと思われます。 2003年8月に行われた「アレクサンドロス」のサイン会では、「ガンダムTHE ORIGIN」完結後の新作候補に、この「BATEREN」の名が挙がっていたと、情報があります。もし本編を描くのならば、序章の内容をもう少し真面目に、長編を、と構想をお持ちのようです。出来るならば、序章のように、オールフルカラーで描いてもらえると嬉しいのですが・・・、「ORIGIN」完結まではまだ数年はかかるだろうし、「アレク・・・」のときのように、「ORIGIN」の片手間に描かれても「ORIGIN」と新作、両作品の質が落ちてしまうように思われます。新作は待望ではあるのですが、個人的には、今はORIGINに集中して後世に残る高品質な作品にして欲しいという思いの方が強いですね。 この「BATEREN」序章のオススメ度は、星2つ。オールカラーという付加価値もあるのですが、やはり読みきりスタイルの内容の物足りなさ、アンソロ・コミックとしての資料的価値で購入する場合話は別ですが、安彦作品だけが目当ての場合コストが高すぎる(安彦作品のみで考えると、24頁で924円・・・1ページ@38.5) そういった部分を考慮すると、オススメ度は低くなってしまいますね。今後描かれる(と思われる)本編に期待、といったところでしょうか。 2003/10/13 shinji |