●安彦良和氏の2冊目の画集です。1冊目の刊行より4年後、1985年（昭和60年）刊で、ちょうど「アリオン」の最終巻が発売された直後、しかもその「アリオン」が映画化準備中というタイムリーな中での発売、・・・というか映画の前宣伝も兼ねていたのかもしれません。そんな時期に発売された画集ですから、当然表紙を飾るのは「アリオン」で、内容も「アリオン」メインに構成されております。

絵柄については、70年代と比べて格段に上手くなっている気がします。特にクラッシャージョウに注目してみると、初期の小説表紙などに描かれた絵柄と、今回の画集に収録されている映画版に関連して描かれた多数のイラストと見比べると、キャラクターのデッサン、色使いなどの違いがはっきりと感じされるでしょう。

70年代のコテコテ油絵チックな路線が、80年代に入ると油絵タッチを取り混ぜながらも、ややアッサリ水彩風味が加わり、強かったクセが中和されたように感じます。また、独特な安彦レッド＆朱色を使った鮮烈な色の使い方も70年代から進化。ゴーグやジョウのイラストをはじめ、ふんだんに使用されており、画集の中でもインパクトが強い。連続して鮮烈カラーのイラストを見ると疲労感が出るのだが（俺だけか？）、それでも何度でも見てしまう妙な魅力を持ったイラストたちだ。

尚、この画集では作品ごとの間に安彦氏のコラムが挿入されており、イラスト以外でも楽しめる。ただ残念なことに、後半イラストのネタ切れをおこしたのか、「アリオン」のコミックからの引用やQ&Aコラムになってしまう。初期の画集でも同じように自分史などが盛り込まれていたが、これでは純粋な画集とは言えまい。当時のイラスト量から考えれば、もっとたくさん未収録のイラストがあるように思うのだが・・・。出版社の利権関係で使えなかったのだろうか。それでも満足できるユーザーならばいいのだが、不満を覚えるユーザーもいるだろう。こうしたことから評価は★３ツといたしました。

---

【簡単BOOKデータ】

●2003/11現在、新規購入は不可能です。中古本を探すしかないでしょうが、比較的流通量は多いので安く入手することは可能と思われます。ただし、およそ20年近く前の本ですので保存状態が悪いと黄ばみや破損などがあるでしょう。神経質な方はよくチェックしてから購入を検討しましょう。

【補足情報】

●この画集に収録された作品および出典数。

・「アリオン」　４０点（コミックスからのコマ出典含む）
・「白い牙」　４点
・オリジナル　１点（ヤングマガジン’82/4月増刊号）
・「FUMIO」　レコード　ジャケットイラスト３点
・「方舟」　オリジナル描きおろし　１点
・「クムクム」　３点
・「巨神ゴーグ」　２５点
・「クラッシャージョウ」　１２点
・「ダーティーペア」　１点
・「クルドの星」　２点
・「機動戦士ガンダム」　２０点
・アニメディア’８３/７月号表紙　１点
・「アリオン」・・・全話扉絵/コミックよりコマ抜き８頁/Q&Aコラム10頁
・あとがき
・コラム・・・映画のこと/サバイバル/日本の街/クサイ-ということ/大嫌いな言葉/タレントについて/親友

---