安彦良和-WORLD WorkList-Illustration シャイローンの二つ星 |
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■この作品が連載されたのは1985年4月~9月までの半年間、2008年現在から数えてなんと23年前!という古い作品です。安彦氏はちょうど「巨神ゴーグ」制作や「アリオン」の連載が終わり、劇場版アリオンの製作に入っていた時期でしょうか。 ストーリーはSFやミステリーモノなど幅広い作風で知られる山田正紀氏が担い、安彦氏はキャラクターデザイン&挿絵を担当しています。物語はSF冒険モノなのですが、「小学一年生」という低年齢対象、学習雑誌が媒体とあって、児童向け絵本といった雰囲気でまとまっています。安彦氏のイラストも全話カラーで掲載されているのが嬉しいところ。ただ、文章が平仮名でかつ、ぶつ切り記載なのでちょっと読みにくさがありますね。 尚、この作品は現在のところ単行本化されておらず、古本雑誌を集めるしか目にする機会のないレア作品となっています。古書を集めるのは時間もお金もかかり、なかなか困難ですので、できればPDFででも電子配布したい気になりますが、著作権は著作権者死後50年は守られることになっているようなので、ちょっと無理かなあ。50年以上先って・・・その頃には私自身も死んじゃってる気がしますよ。山田正紀氏の許可がもらえれば配布可能かも!?山田氏からの許可連絡をお待ちしております。 01.物語について ■TVの中へ・・・
番組に夢中になる健一、最後に残ったシャイローンが切られた時、健一は「たすけて!」という叫び声を聞く。悪いロボットが助けてなんて図々しい、と思う健一(苦笑) 爆発するシーンで画面が白くなってしまうが、その時健一は奇妙な感覚にとらわれる。体がTVに吸い込まれてゆく!!・・・気がつくと健一はTVアニメの世界にいた。目の前には先ほどバイオスに切られたシャイローンが炎を上げながら立ちはだかっている。突進してくるシャイローンに健一はパニックに陥り叫び声を上げるのだった。 ストーリーは小学一年生向けなので、荒唐無稽な部分はやむを得ないところ。しかし部分部分で結構笑えてしまえるところがあって楽しいですね。シャイローンが助けを求める場面で「悪いロボットが助けてなんて図々しい」と思ってしまう健一が可愛いではありませんか(ちょっと笑ってしまった) 安彦氏イラストはカラーで掲載されており嬉しいのですが、挿絵はやっぱり年代を感じさせますね。例えば自転車で夕刊を配るおっちゃんの後姿、家の形、電柱やアンテナとか。TVの下には大きなビデオデッキがあったりと1980年代の雰囲気が偲ばれます。ちなみに健一の家のTVはソニーならぬ「SANY」製・・・バッタモンかよ、と思わず突っ込みます。 それと、正義のロボット・「バイオス」はどう見ても「ガンダム」の影響を受けて(というかほとんどそのままに見える)いて、これはサンライズ的にはOKな範囲なの?と思ってしまうところもあります。まあ、昔はおおらかな時代だったのですね、ということで。 ■小さな子供はいつも色んなところを旅しているんだ、空想の旅をしているのさ TVの世界に入り込んでしまった健一、状況把握ができないまま、目の前に悪のロボット・シャイローンが迫る。腰を抜かした健一は思わず目をつぶってしまう、が、シャイローンは健一を襲おうとしたわけではなかった。
やがて飛び去ってゆくフライング。「怪我はなかったかい?」と優しく語り掛けてくるシャイローン。「TVを見ていてこの世界に入ってきたのか」「時々そんなことが起こる」「大人になると皆忘れてしまうけど、小さな子供はいつも色んなところを旅しているんだ、空想の旅をしているのさ」と語るシャイローン。しかし、その直後シャイローンは大きな音を立てて倒れてしまうのだった。 イラストは、フライングの攻撃を受けるシャイローンの後姿がゴーグに似ている気がしますね。他にも構図のなかに微妙にゴーグ的な雰囲気が紛れ込んでいます。やはり描かれた時期にも影響されているのでしょうか? あまり子供に好かれる色使いではないと思いますが、全体にオレンジ系を多用していて、薄暗い感じが安彦イラストであることを実感させますね。健一のやわらかい体の線も物語りにマッチしてていいです。 ■ぼうや どこへ行くんだい?
健一を待ち受けている「バイオス」、結構ヒマなんだなと突っ込みつつ、なんだかバイオスが悪者みたいになってきてますね。今回の安彦イラストは扉絵や、シャイローンが健一を見送る姿もかわいくていいのですが、最後の一枚であるバイオスの立ち姿カットの色使いがいいです。児童向けのストーリーなのに、イラストは逆にマジっぽくなってきていて(バイオスのデザインは別として)、妙なギャップを感じてしまいます。 ■こんなじゃ、シャイローンの「こころ」を持ってこれない・・・ 健一の前に立ちはだかる「バイオス」 バイオスは健一にどこに行くのか尋ねるが、健一はバイオスが怖くなって答えることができない。黙り込んでいる健一に、バイオスは目的地まで送ることを申し出るが、そうなるとシャイローンの為に基地へ行くことがバレてしまう。
健一に基地まで行かせておいて、彼がピンチになると地中から現れるって・・・動けなかったんじゃないのかよ・・・?そんだけ元気なら自分で取りに行けよ・・・、ダメだ毎回突っ込んでしまう・・・ホント面白いなこの展開(笑) イラストはがっぷり四つに組むシャイローンとバイオス。なんかますますゴーグチックになってきた感じ。 ■ぼうや、「こころ」を・・・
バイオスが無意味に飛んでみたり、倒したはずのシャイローンに崖下へ落とされたりと、お笑い系キャラで面白い。最後は落ちてきたタライでヤラレそうな感じだ。 イラストは相変わらずオレンジ系統で統一。ちょっと同じような場面で単調かな。 ■あれは夢なんかじゃなかったんだ! 崖をハイスピードで滑り降りてゆく健一。目の前に迫る基地、しかし背後からはバイオスの乗るフライングがしつこく追いかけてくる。「君はシャイローンに騙されている、助けてはならない」とバイオスは警告するが、健一は聞く耳を持たない。シャイローンが自分を助けてくれた、今度は自分がシャイローンを助ける番だと。 何度も警告を無視されたバイオスは健一を攻撃し始める。しかし健一もレーザー攻撃をかわし基地へと飛び込んでゆく。基地の中では煙が立ちこめていたが、何か輝くものが地面に落ちているのが分かる。これでシャイローンを助けることが出来るぞ! 健一は「こころ」を手に駆け出すが、その刹那、再びフライングからの攻撃が目の前をかすめる。目の前でスパークが弾け気を失う健一・・・彼の脳裏をかすめるのはシャイローンを助けなきゃ、というそのことだけだった。
夢と現実が交錯する不思議な物語でしたが、最後は夢落ちというありがちな落としどころでまとめ。まあ、しょうがないか。しかし、子供相手にレーザー光線で攻撃しちゃうバイオスはいかがなものかと。お仕置きどころか死んじゃうでしょ。 安彦氏のイラストは最後は異空間から抜け出し、アットホームな家族の団らん風景で締め。全体を通して、異空間を演出する薄暗い感じが重苦しい感じだったけど、最後はさわやかな色づかいで締めてくれたのでよかったです。 シャイローンやバイオスなどのメカデザインは、ガンダムやゴーグのパロディ的なところもあったのかも。正直洗練されてない感じが残っていて、お子様向けだから・・・という意識がどこかにあったのかもね。人物はほぼ健一だけなんだけど、幼い丸っこい感じがよかったかな。 シャイローンの挿絵でも結構盛り上がれる(私だけかもしれないが)のだから、安彦さんにはまた機会があれば、何かの小説イラストに挑戦して欲しいですね。 2008年05月05日 shinji
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