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  1)舞台と時代背景について
  2)登場人物と物語について
  3)登場人物表



虹色のトロツキー


安彦良和 (著)

初出 月刊「コミックトム」連載
■第1集1990年11月号~1991年2月号・1991年4月号~1991年7月号掲載
■第2集1991年09月号~1992年4月号 掲載
■第3集1992年05月号・1992年11月号~1993年02月号 掲載
■第4集1993年03月号~1993年06月号・1993年08月号~1993年11月号掲載
■第5集1994年01月号~1994年08月号掲載
■第6集1994年09月号~1995年04月号掲載
■第7集1995年05月号~1995年07月号・1995年09月号~1996年01月号掲載
■第8集1996年02月号~1996年04月号・1996年06月号~1996年11月号掲載
虹色のトロツキー(1) 中公文庫版

虹色のトロツキー (1)

amazon.co.jp
ジャンル
キーワード
・五族協和
・満州
・建国大学
・アドベンチャー
オススメ度 Good Job! ★★★★★
出版データ詳細 出版データへ潮出版社/希望コミックス版
出版データへ中央公論新社/中公文庫コミック版

この作品は1990年から1996年にかけて月刊「コミックトム」(後コミックトムプラスに誌名変更・2001年廃刊)に連載されていました。掲載されていたトムという雑誌は「三国志」などの歴史を扱った作品が多い特色のある漫画雑誌で、連載陣も横山光輝氏・手塚治虫氏など強力な個性を持つ作家達がいました。歴史系の作品を得意分野としている安彦氏にとっては、相手にとって不足なし。プレッシャーもあったかも知れませんが、意欲的な歴史作品を発表するには打ってつけの場だったのではないかと考えます。

01.舞台について

昭和13年(1938年)6月、第二次大戦前の世界情勢の混沌とした昭和初期、日露戦争後、日本が大陸の権益確保に乗り出し、関東軍を中心とした満州事変を経て建国されたばかりの満州国、そして国策で造られた建国大学が序盤の舞台だ。

そもそも満州国、ましてや「建国大学」を舞台に描いた漫画というのは初めての体験。少々敷居の高さを感じさせるが、読み始めれば大した知識が無くても大丈夫。しかし、何も知らずに読むよりは、あらかじめ時代背景を簡単にでも整理しておく方がより面白みは増すと考えるので、少し調べた内容をメモ書き。

満州国の位置は図1のとおり。白地図にマウスで引いたので、かなり国境範囲がいい加減になってしまったがお許しを。正確でないと許せない方は「満州国」をキーワードに検索すれば正確なマップが参照できると思いますよ。

満州国の位置
(図1)満州国の位置
(物凄く大雑把な範囲でスミマセン・・・)
ちなみに・・・

■満州国とは、1932年から1945年の間、現在の中華人民共和国東北地区および内モンゴル自治区北東部に存在した国。満州事変以降は、実質的に当地を占領していた日本の関東軍の支配下だった。第二次世界大戦(大東亜戦争)での日本の敗戦とともに消滅。

■建国大学は、満州国の首都・新京(長春)にあった国務院直轄の国立大学。略称は建大。石原莞爾の持論「五族協和の実現」に立脚している。

1938年5月に開学、1945年8月満州国崩壊とともに閉学した。本科(政治学科・経済学科・文教学科)と予科が置かれ、官費により学費は無料。全寮制で日本系・満州(中国)系・朝鮮系・蒙古(モンゴル)系・ロシア系の学生が寝食を共にし、寮を「塾」と称した。

02.時代背景について

また、当時は明治以降激動の時代、欧米・アジア諸国が野心を持って激しく領土とその権益を争奪しており、そこに共産主義や宗教という主義主張が入り込み混沌としておりました。満州国はその争奪戦の主戦場の一つとなり多くの悲劇を残しました。第二次大戦後はソ連に占領され、後に中華民国へ返還されましたが、そういった当時の情勢を簡単にまとめ、日本が満州国を使って何をしようとしていたのかを挙げてみました。

ロシアの野心

■1905年 日露戦争敗北
旅順・大連の租借権と長春~旅順間の鉄道設備を日本へ譲渡
■領土拡大=南下政策
■1917年ロシア革命=ソビエト連邦樹立=共産主義の拡大
矢印
清の弱体化

■欧州との戦争と敗北
■日清戦争敗北
■義和団の乱を経て植民地化進行
         ▼
■辛亥革命により清朝崩壊
         ▼
■中華民国(1912年)へ
矢印 浮かび上がる日本の意図

(1)満州を植民地化し、日本人を入植させる受け皿とした

(2)戦時体制へと歩んでいく日本への食料供給基地としての側面も


(3)共産圏の拡大=ロシアの南下政策・中華民国の北上に対して、満州を緩衝地帯とした

(4)ユダヤ教徒によるユダヤ人自治州を企図=米国のユダヤ・マネーによる支援を期待
矢印 日本の暴走

■日露戦争勝利
■南満州鉄道設立など、遼東半島の権益取得
■満州事変による関東軍の占領

■国際世論の批判をかわす為「
溥儀」を擁立
■1932年 満州国建国(傀儡国家)
■昭和恐慌(1930年)・凶作による経済疲弊・人口増
■1933年 国際連盟脱退(孤立化)
         ▼
     第二次大戦へ・・・
矢印
翻弄される満州

■馬賊上がりの将校・張作霖が台頭
■1928年張作霖 中国国民党に敗北
■1928年関東軍による張作霖暗殺
■1932年 満州国建国
■1932年 リットン調査団
■1945年 終戦直前にソ連侵攻=国家崩壊

1930年頃の世界恐慌と、凶作による日本経済の疲弊、明治以降の人口増、こういった問題を解決するために国家レベルの口減らしとして、日本は満州に開拓民を入植させた背景があります。また、一方ではロシアの南下政策により、外蒙(モンゴル)が独立、ロシアの衛星国と化し、新疆方面も属国化しようとしている状況。ロシア共産圏の脅威に対して日本としては満州を死守する必要性があった、というのがこの物語の背景である。このことは、物語中にも語られるが、頭の片隅に覚えておくと話がわかりやすいと思う。


さて、少々時代背景の説明が長くなったので、別ページで登場人物や、物語について語りたいと思います。つづく・・・(現在執筆中につきしばしお待ちを)
2006/08/09 shinji


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