安彦良和-WORLD WorkList-Comic 虹色のトロツキー
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01.帰郷・通遼にて■第二巻では、ウムボルトの友人であるジャムツ(孫逸文)等抗日運動家との接触、それを追う特高の楠部を縦軸に、そしてウムボルトの父の謎を横軸に展開、1巻よりはややアクション性は高い。後半は舞台を建大へと戻し、馬小屋篭城エピソードを絡めながら展開する。
■父と同様に新疆へ向かうことを指示されたウムボルト。しかし彼は建大から姿を消し、故郷「通遼」へと舞い戻る。父、深見圭介とは何者だったのかを知るために。しかし、育ての伯父は忌まわしい過去を葬り去るかのように、父に関するものを処分していたのだった。 伯父は無残な死に方をした妹(ウムボルトの母)のように、ウムボルトを事件に巻き込ませないため、父・圭介の情報を処分していた。また彼自身、忌まわしい思い出を消し去りたかったこともあっただろう。 しかし、失った記憶を取り戻そうとするウムボルトは、そんな伯父の気持ちを察することなく、父の情報を追い求める。何度も夢に現れる、母が暴漢に襲われる光景。彼のトラウマを打ち消すには、どうしても過去の記憶を見つけ出す必要があったのだ。 そんなある日、憲兵隊にしょっ引かれたウムボルトは、そこで一つの写真をを見つける。その写真に写っていた男は、建大で合気道を教えていた「植芝盛平」であった。植芝はかつて出口王仁三郎とともに通遼で活動していた一人だった。そこで深見と植芝は知り合ったのではないか?ウムボルトの中で小さな糸口が見つかる。 ■一方、ウムボルトを追う男が一人。奉天機関の憲兵・楠部、かつてウムボルトをアカ学生として締上げた男だった。彼はウムボルトと抗日ゲリラのリーダーであるジャムツとが友人であることから、彼を泳がせてジャムツを確保する計画を企んでいた。 自宅への帰路、暴漢に襲われるウムボルトは、ジャムツの一派に助け出される。これはジャムツとウムボルトを接触させる楠部の仕掛けた罠だったのだが、二人はそれを知らない。久しぶりの再開を果たすウムボルト達だったが、ジャムツは抗日の同志として連絡を取り合うことを彼に要求するのだった。 ここで登場するウムボルトの旧友、ジャムツ。初登場時はクールで切れ者っぽい印象の彼だが、物語後半になるとかなり情けない男に描かれることに。この巻での活躍が彼の最初で最後の見せどころかも知れない。 このパートでジャムツの仮説が浮かび上がる
■ジャムツの部下であった銀巴里の歌い手「麗花」、ウムボルトは麗花とともに楠部の追っ手から逃げ延び、再び建大へと舞い戻る。新京への汽車の中で、ウムボルトは楠部と出会う。そこで語られる楠部の石原の謀略についての見解は、ジャムツの仮説と一致していた。
02.再び建国大学へ■昭和13年9月、ウムボルトは再び建大へと舞い戻る。しかし建大ではひとつの事件が起こっていた。六塾の生徒が馬小屋に立てこもっていたのだ。(ここで取材のエピソードが使われる)六塾の生徒達の主張は、五族協和を掲げた満州国だが、実際には日本人が威張り散らしている状態、建大建設時にも地元住民は追い出されて、その土地に自分達がいるという矛盾。このままでは民族協和は絵に描いた餅ではないのかという抗議の意思表示だった。 騒動を傍観するウムボルトだったが、そこに単身暗躍する辻政信が現れる。新疆の一件は忘れろという辻、そして父の仇をとり、ロシアの野望に立ち向かうために命を預けろと言い出すのだった。辻が力説するロシアの陰謀と深見圭介の謎とは?
しかし、この辺りから、辻のキャラクターが生き生きと躍動し始めて面白い。安彦先生もこのキャラクターの使い方を腹に決めたようで、コスプレ(?)させながら、物語を引き立てさせるムードメーカーに仕立てていますね。 ■その後、辻との話とは別に動き始めるウムボルト。しかし、パインタラ事件から先の手がかりをつかめないまま。しかし、新聞記事を読み漁るうちに一つの記事に突き当たる。「ソ連要人亡命」「ゲンナジ・ヤン・ミリューコフ」、この写真に写るミリューコフの顔と、過去の記憶がオーバーラップする。ようやく、手がかりをつかんだウムボルトは、ミリューコフに会うため関東軍本部へと向かうのだった。 第二巻の要点は、ジャムツ・楠部の仮説、そして後半の辻政信の話。このあたりは覚えておきたいところ。読み進めると、どんどん色んな話が出てきて要点が分からなくなってきますから、パート・パートで押さえたほうが、全体の話が分かりやすくなるでしょう。さて、事件の真実はどこにあるのか?ようやく糸口を見つけたウムボルトですが、果たして核心に迫れるのでしょうか?・・・つづく。 2007-07-16 shinji
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