機動戦士ガンダムユニコーン MOBILE SUIT GUNDAM UNICORN 0096/sect.1　ユニコーンの日 2 福井晴敏 (著)・安彦良和（挿絵・キャラクターデザイン）

人工太陽に挑んだイカロス、あえなく公園に落下

■今回も前回同様カラー8ページ（前回までのあらすじ１ページ分含む）＋モノクロ32ページ。また、ユニ・ブロ１ページ内にてコロニー建造のしくみを図解、カトキハジメによるメカ解説ページが２頁付属。主にガランシェールと、ネェル・アーガマについて記載されている。

このメカ解説ページは前回と同様、変な画像加工が施されていて、とても見難い。そもそも画像がぼやけているのが気になってしょうがないので、編集部は改善をお願いしたい。

01.挿絵について

■今号は「前回までのあらすじ」1ページ内で登場人物紹介があり、マリーダとジンネマンのカラーイラストが小さいものの新規に掲載されている。挿絵は1ページサイズでカラー2点（扉絵1点含む）、白黒9点（1頁サイズ1点+半頁サイズ1点+キャラ単体モノ7点）が掲載。

扉絵については文句なし。このくらい手の入ったイラストが2頁毎でついていれば嬉しいのですが・・・無理だろうなあ。続いてプチモビ軟着陸後のカラーイラストは背景が白いせいか、ちょっと手を抜いた印象が残る。

あとは白黒になってしまうが、ジムっぽいＭＳリゼルをバックに、新キャラのリディとギブニーが描かれた半ページモノイラスト。リディがＺのジェリドに見えてしまった。あとで改めてリディ上半身の挿絵が出てくるが、こちらはジェリド似ではなかった。

新キャラ挿絵はミヒロと、アルベルト、ミコットと続くが、どれも単体の挿絵でキャラ紹介といった感じ。絵の中に物語中の演技は入っていない。ミヒロはミライの顔をベースに目を大きく＆少し若くしたような印象。アルベルトは文面の紹介どおり、ベビーフェイスなデブという表現がハマッタようなイラスト。これにはちょっと笑いが。

マリーダのイラストは、今回はかなり厳つく登場していて、バナージの肩をつかみあげてみたり、追い掛け回してみたり。特に追いかけるイラストは白目むいててマジ怖え（背景はかなりいい加減に思えるが）普通の人間じゃないよな？これがバナージとマリーダの因縁の始まりになるとか？

今回は掲載点数が多いものの、小物が多く、1枚サイズモノでも少し粗っぽく見えてしまって残念なところ。扉絵と、リゼルの半頁サイズモノしか満足できなかった。また、白黒掲載も残念な点で、今後全頁カラー化をお願いしたいところです。

02.物語について

■物語は今にも人工太陽で焼かれようとしている姫様を助けに、バナージがプチモビで向かうところからスタート。人工太陽を支える柱に接触したプチモビは急降下してゆくが、コロニー内壁の回転速度とプチモビの推進速度との差についての描写は、今ひとつ分かり辛い気がする。その細かい速度差描写が妙に気になってしまって、場面の緊迫した雰囲気やスピード感を殺してしまっているような・・・。

姫様とバナージの初対面は、いきなり引きずり倒され、腕を捻りあげられたりと最悪な出会い。助けた礼もなく、いきなり「誰か！？」と言ってしまうのはやはり血筋のせいだろうか？（特にキシ○ア叔母系？）こういった出会いを演出してしまうのは、ツンデレ系に仕立て上げようという福井氏の目論見なのだろうか・・・。

しかし、この出会いが無目的に生きているバナージの心に波紋を投げかけ、「意気地のない人・・・」という彼女の言葉が胸に突き刺さる。今まで気にも留めなかった歴史の授業も、彼女の言った「戦争」という言葉から、いつもと違う思索をバナージは巡らせてしまうのだ。彼女との出会いと、彼女の言葉の重みはバナージに一つの変化をもたらしていた。

場面変わり、ロンド・ベルのはぐれ部隊「ネェル・アーガマ」のパイロット、リディが登場する。今回は彼の独白を含み、ネェル・アーガマのクルーとエコーズとの関係と現状などについて全体の3分の1程度を費やしている。初登場のキャラクターばかりで、やはり最初は細かな設定説明に終始せざるを得ないのだろう。

私は設定を興味深く読んでいて、妄想を膨らますタイプなので、特に気にはならないのだが、物語を早く進めてほしい人には退屈で辛いところかも知れない。まあ、序盤はしょうがないと割り切っていただくしかないかと。

後半はガランシェール・クルーに密航がバレた姫様を、マリーダが追う展開。朝方のプチモビ事故事件の記事を元に、バナージを割り出す展開はよく考えたなあと感心。小さな糸口から手繰っていくマリーダの直感力も見えて良い感じ。ただ、バナージを簡単に見つけすぎかな？とは思うけれど。

その後、マリーダに締め上げられたバナージは、恐怖で彼女のことを話してしまう。暴力に屈し、プライドを深く傷つけられたバナージは、マリーダ達を追う。前半の姫様の言葉の響きに心を動かされ、今度はマリーダに傷つけられる。二人を追うバナージの心の動機付けはちゃんと描かれていて好感。このところの描写をいい加減にしちゃうと、なんで主人公が姫様を助けに行くのかわからないストーリーになってしまうものな。

また、移動するコロニー造成ユニットを利用した逃亡劇も、うまい具合に考えられていて面白い。しかし、このところを「ユニ・ブロ」で図面付で解説していたが、その図解は今ひとつ分かりにくかったのが残念なところ。あの図解がちゃんと色のついた絵になっていて、更に動きがあれば理解しやすかったかも。

また一方では、このユニットを利用した描写がご都合主義と感じる読者もいるだろう。そもそも、バナージがユニットが移動する場所と時刻を知っていたとしても、ちょうどその絶妙なタイミングに、その場所にたどり着けるなんて話が出来すぎているしね。それにマリーダのような強化人間なら跳躍力は人間離れしているだろうから、姫様の足につかみ掛かって引きずり下ろせたかも知れない。まあ、細かいこと言い出したらキリがなくなるのでおおらかな気持ちで読みたいです。

個人的には、バナージの心境の変化とか、ミネバを助けようとする動機付けとか、キャラクターの心の動きがちゃんと描かれているし、コロニーの設備やなんかを利用しつつ、ピンチを切り抜ける、設定とストーリーのからみは工夫されていて楽しめます。

■さて、登場人物が序盤から多すぎる状態ですが、今のところ主線はバナージと姫様、マリーダのからみのところ。姫様は未だ偽名も名乗らず。偽名（予定）のオードリー・バーンは、やはり某有名女優からきていることがミネバの回想から判明しました。

次回以降は、姫様とバナージはマリーダを撒いてカーディアスに会えるのか？、二人はユニコーンを強奪しちゃうのか？、二人はネェル・アーガマにつくのか、ガランシェール側につくのか？いろいろ妄想してしまいますが、お楽しみは次号まで。問題は私のこのテンションが1ヶ月続くかどうか・・・。


03.登場人物ほか用語一覧