安彦良和-WORLD WorkList-Comic 機動戦士ガンダムTHE ORIGIN
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ガンダム大地に立つ!
01.機動戦士ガンダム THE ORIGIN とは?■長々と「ガンダム」の製作背景を語ってきたためにページが別になってしまいました。ご容赦を。ここでは、オリジンについて語っていきたいのですが、その前にまたまたオリジンの成り立ちについて、前説しておかなければなりません(ゴメンなさい)そもそも事の始まりは、サンライズ代表者である吉井孝幸氏の「世界ガンダム展開」・・・要は日本にとどまらず世界をマーケットとして展開していく際の、「ガンダム」を世界に紹介するツールとして、安彦氏に執筆依頼をかけたのが始まりです。 「ガンダム」は映像として製作されてから既に四半世紀が経過し、流石に古びた感が否めない。最新の技術で製作された他のアニメーションと比べればその差は一目瞭然。映像としてリメイクしたいがそれも今となっては難しい・・・(※2005年現在ではその役割を担ったのがSEEDシリーズか? 当時のファースト世代は既に中年化し、そのジュニア世代をターゲットに先に向けて展開していく必要があった。)また、ビジネスの側面以外でも、安彦氏のその抜きん出た絵の才能を形として(印刷物)記録しておきたいという気持ちもあったという。 安彦氏は当初、この誘いを断っていた。一つはガンダムを最初に描いていたという「尻尾」が切れて、自由に漫画家人生を謳歌していた矢先のことであり、再び終わった仕事をなぞる事はしたくなかったこと、また、一旦描きはじめれば4・5年はかかる仕事だろうし、その間の執筆ビジョンが御破算になってしまうこともあった。 ■しかし、何度かの誘いを受けるうちに安彦氏の気持ちも徐々に揺らいできた。その理由は、当時TV版製作半ばにして体調を崩し、製作現場から去ったこと(劇場版3「めぐりあい宇宙」ではそのブランクを埋めるかのように新作カットと入れ替えたが)で中途半端な思いが残ったこと。その気持ちにけりをつけるいい機会だという、心境の変化があった。また、当時はスポンサーの要請もあってキャラクターやストーリー展開及び場面ごとの状況、敵のモビルスーツ類など、無理のある設定や妥協がまかり通っていたのが現状だった。そういったところをわかりやすく整理して、現代でも通用するリアルさを補強し、物語を再構築したいという目的を持つに至ったことが大きい。 そんな心境の変化があった最中、氏は肺炎で入院することに。こんな体調では執筆は無理か・・・という考えもよぎったが、病院でやることもないのでネーム(下書作業)を切ったのだが、思いのほかはかどり、ガルマ編終了あたりまでかけてしまった。これでイケルかな?と考えた氏は出版社を探し始める。(このときのネームは公式ガイドブックに数枚掲載されています) 噂では、当初某社(?)に話が入ったが対応した担当者に断られ、角川書店に持ち込んだところ合意を得られたという。しかし、1回の掲載が100頁くらいにしたいという安彦氏の条件があったため、急遽この作品を載せる専門誌が企画された。それが後の「ガンダムエース」である。安彦氏が「機動戦士ガンダム」をコミカライズするという話は新聞にも掲載され、大きな話題を呼んだ(私も新聞で読んだとき正直ビックリしたもんですよ。) ガンダム専門誌?そんなモン売れるかよ?という業界の予想を覆し、2001年6月ガンダムエース創刊時には売り切れ続出、増刷を重ね実に30万部を販売したという記録が残っている。その後、ガンダムエースは季刊誌から隔月、そして月刊誌へと姿を変え、オリジンの進行はドンドン進んでいるが物語はまだ半ば。2005年01月現在ではエース読者からのエピソード投稿などを元に、氏オリジナルの展開が進んでいる。完結までまだ道のりは遠いが、氏の挑戦はまだ続いている。 02.第一巻「始動編」について■さて、ようやく本題です。当初季刊として刊行されていたガンダムエース、本来であれば、半年に1冊の割合で出版できそうなものですが、結局連載開始から第一巻の発売まで1年のインターバルが必要でした。内容は第一話「ガンダム大地に立つ」がメインで、第二話「ガンダム破壊命令」の一部をベースとしている(劇場版1の序盤をベースにしているともいえます)充分な準備期間と、執筆期間を得て描き始めたため、コロニー・モビルスーツなどの細かい描きこみ、安彦氏オリジナル部分と基本ストーリーとの絶妙な構成、各コマごとのアングル、登場人物達の役割再設定とそれぞれのからみ・・・などなど、細部に渡って丁寧に仕上げており、安彦氏のモチベーションの高さがヒシヒシと伝わってくる。特に冒頭のカラー頁は当時の記憶を蘇らせるような臨場感で、この「始動編」の完成度は非常に高いように思う。 この「始動編」で見所は、なんと言っても安彦氏オリジナル部分だ。スローに始まる冒頭からジックリと描かれ、これから何かが始まる予感を漂わせ、一つ目モビルスーツ「ザク」の不気味さも際立っている。また、その後に展開される連邦の新型機VSザクとの戦闘は氏独自の展開となり、TVや映画版から入った人は読んでいて驚くかもしれない。この戦闘シーンは引きからアップへとコマごとに変化に富み、見るものを飽きさせないし、ザクのライフルを連射するシーン(このシーンが凄くカッコイイ!)から、爆煙の向こうからゆっくりと姿を現す連邦新型機に読み手はドキドキしっぱなしで目が離せなくなる描写はよく考えられています。 ■人物描写では、巨大なライフルの信管が主人公アムロの頭上に落ちて来るシーンで、恐怖に駆られて逃げ出すアムロの表情が良いし(落ちてくる信管のアングルも絶妙)、目の前で両親を失ったフラウの錯乱シーンもその悲しみが伝わってくるかのようだ。また、後半ではパオロ艦長の活躍シーンも盛り込まれ、ストーリーを盛り上げている。特にスタート地点では、時代背景、敵味方の関係、登場人物の役割とそれぞれの関係など膨大な情報を読み手に伝えなくてはならないので、かなり人間関係も丁寧に描かれている。 一方、モビルスーツ等メカ類については、大河原氏の協力を得て、新たにリファインされた変化点を探すのも面白いだろう。また、それらのモビルスーツが安彦氏のデフォルメされた動きでもって、まるで生き物のように動いている躍動感は、他の作家ではなかなか見ることの出来ない部分だろう。 ■「始動編」は非常に満足度の高い仕上がりだが、もちろん完璧というわけではない。強いて不満部分を挙げるとするならば、 (1)ザクの爆発シーンでは、モビルスーツが玩具のような壊れ方をしている点 (2)軍の制服などは別として普段着など衣装デザインはもう少し改善というか、今風というか、専門デザイナーの協力を得ても良かったのではないか? (3)これはもうお約束なので、あえて言うべきことではないけれど、民間人のミライがWBの操舵を任されたり、アムロが継続してWBの出航支援に出撃してしまうのはやはり不自然・・・。 ・・・といったところか。ここでの不満点は少ないですね。また、コミックスでは連載誌で掲載されていたカラー頁が大幅に削られ、白黒になってしまっている点、紙質があまりよくない点、サイズが小さい点が非常に残念なところ。(※尚、2005年04月には愛蔵版刊行が予定されており、そこで改善されているものと思われます) ■さて、「始動編」を通して読んだ私は、昔の思い出に浸りながらも、新たなオリジナル展開で胸がワクワク状態、手の震えが止まりません。さらに、ラストシーンでは迫り来る敵「赤い彗星」のセリフとドアップシーンが止めを刺し(コノ巻で一番キマッてるシーンだよね)、次巻を早く読みたい気分で一杯でした。この先、掲載誌が季刊から隔月、月刊へと変わり、執筆期間がドンドン削られていくわけですが、連載を急ぐあまり作品の質が落ちてしまってはコミカライズする意味がなくなるわけで。企業側の利益主義は商売である以上やむを得ない部分ではありますが、編集スタッフは、このコミカライズの意義を忘れずに、安彦先生を支援していただきたいものです。これは一ファンとして切実な願いです。 第一巻「始動編」はそのクオリティーの高さに星5ツ。SFスパ・ロボなんかに興味ない人はしょうがないですけど、コイツは絶対にオススメですよ!。 ※尚、この話は第二巻「激闘編」へつづく・・・ 2005/01/10 shinji
【第1巻 始動編 あらすじ】 ●宇宙世紀0079、増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって半世紀余、地球からもっとも遠いスペースコロニーサイド3がジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んできた。一ヶ月余りの戦闘でジオン・地球連邦双方は人口の半分を死に至らしめた。戦争は膠着状態に入り8ヶ月余りが過ぎた・・・ 赤い彗星の異名をとるジオン公国将校シャア少佐は、ゲリラ追討作戦を終え、帰還途中に連邦軍の補給艦「木馬(ホワイトベース)」を発見しそれを追尾する。サイド7に向かう「木馬」に連邦の「V作戦」の臭いを嗅ぎ取ったシャア少佐は一個小隊をサイド7に潜入させ偵察を試みる。工事ブロックで連邦の新型モビルスーツと遭遇した小隊は戦闘に入り、やがて暴走を始めた新兵ジーンのためにサイド7は戦場と化す・・・平凡な日常を送っていた少年アムロ・レイは、その戦闘に巻き込まれながらも、父テム・レイの開発した連邦の新型MS「ガンダム」乗り込み、ジオンのザクを食い止めようとするが・・・第一巻はサイド7脱出までが描かれる。 |
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