安彦良和-WORLD WorkList-Comic 機動戦士ガンダムTHE ORIGIN
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私は過去を捨てた男だ
01.「ララァ編」後について ■第18巻「ララァ編 後」について。収録内容は以下のとおり。コンスコンを撃破したWB部隊はサイド6を後にし、サイド5で進行しつつあるジオンの極秘プロジェクトを叩く、特殊任務に就いていた。 18巻後編 ■08年04月26日VOL,070(06月号) ■08年05月26日VOL,071(07月号) ■08年06月26日VOL,072(08月号) ■08年07月26日VOL,073(09月号) ■08年08月26日VOL,074(10月号) ■08年09月26日VOL,075(11月号) ■対応するTV版からの主なチョイスは以下のとおり。ソロモン編がこの後(19・20巻)に回り、先にテキサス・エピをチョイス。「オデッサ編」で死亡したマ・クベの代わりにシャリア・ブルが登場し独自エピソードで展開する。 ■第37話「テキサスの攻防」 ■第38話「再開、シャアとセイラ」 ■第39話「ニュータイプ、シャリア・ブル」 ■恒例のWB部隊の航路図は以下のとおり(コロニーの位置と航路は適当ですが)前編でコンスコン隊を撃破した後、特殊任務を受けサイド5へと向かい、シャアのニュータイプ部隊と戦うこととなる。 02.物語について ■今、大佐が私の心をさわったんです 後編の舞台はサイド5[ルウム]へ。かつて、宇宙移民を旧世紀の北米国移民になぞり、潤沢な資金に任せて作ったテーマパークだ。しかし、ルウム戦役で被害にあったコロニーは一部機能を停止、砂漠化が進み移民者も退去、無人の荒野となった。 連邦の大反抗戦「星一号作戦」が進行しつつある中、WB部隊はティアンム司令からの極秘任務を受け、サイド5へと向かいつつあった。サイド内部にはシャアのザンジバルが入港していることが分かっている。上層部の命令は、ここ[ルウム]で行われているジオンの極秘プロジェクトを叩けという事だった。 一方、[ルウム]でフラナガン機関と接触していたシャアは、ララァのニュータイプ戦士としての適正結果を受けていた。ララァの成績に興奮するフラナガン博士だが、シャアの胸中は・・・? また、シャアの元へ一人の男が送られてくる。MAN特別部隊へ配属された、MAN-03[シャリア・ブル大尉]だった。木星船団指揮官としてジオン十字勲章を受けた輝かしいキャリアを持つというシャリア・ブル。ギレンの特命により配属され、自らの能力を公国の為に捧げるというシャリア・ブルだったが、引き合わされたララァがうら若き小娘であったことに衝撃を受ける。 さて、後編スタートでGAの表紙を飾ったのが、シャリア・ブル。どうやら独自展開が始まりそうなサプライズです。オリジンでは出てこないだろうと思っていた上、キャラ設定も若返っていて最初は誰なのか分かりませんでした。しかも後ろにそびえる卵形の塔のようなイラスト。ブラウ・ブロの代わりに変な新MA出すのかな?とも思いましたが、これはブラウ・ブロを格納しているプラットホーム&司令塔のようなものらしい。しかし、隠密プロジェクトでありながら、こんなに目立つ塔をおっ立てるというのはいかがなものでしょうか・・・。見つけて頂戴と言っているようなものだと思いますが、プロジェクトリーダーがシャアだからなあ~。 そして、極秘プロジェクトを叩けという命令を受けたWB隊。でも肝心な詳細情報はシャットアウトされていて部下に指示を出すブライトも、命令を受けるスレッガー達も歯切れが悪い様子。実際の軍隊でもこんな曖昧なカンジで命令出されたりしちゃうものなのでしょうかね?把握している情報が少なすぎて適切な情報を渡せないという上層部のジレンマもあるのかも知れませんが、闇雲に戦力を投入しても、場合によっては返り討ちにあって貴重な戦力を失うことになるかも知れないリスクがあると思うのですが・・・。まあ、既にWB隊が単独行動を指示されている時点で、主戦力とは見なされていないのでしょうが・・・。 また、今回の作戦に投入されるWB部隊の戦力は、先鋒隊:ガンダム・キャノン×2台、後発隊:キャノン×2台、ダンク1台という、ガンダム以外は貧弱な旧型揃い。オデッサ戦でジムはあらかた失ってしまったのか?、主力のティアンム艦隊にジムを集中的に配備した結果でしょうか? 安彦さんが描くの面倒とか、ないですよね? いずれにせよ、このままでは心許ないので、ソロモン戦までにはジム配備して戦力増強してもらえることを期待。 一方、ジオンの極秘プロジェクトとは、「MAN特別部隊」というニュータイプ部隊の設立・育成とニュータイプ専用のMAの開発実験のようです。シャアはこの部隊のリーダーとして任命され、フラナガン機関と共にララァ育成にあたっていたようです。そこへギレンの肝いりで送られてきたシャリア・ブル。 TV版の枯れた設定より若返っており、顔つきはちょっと「紅の豚」(byジブリ)のキャラを思い出しました。「ジオン十字勲章」を受けた誇りを胸に祖国に尽くす熱き男、というカンジですが、その若さ故にTV版の趣とは違って俗物っぽくなった感があります。また、プライドは相当高いようで、一見小娘にしか見えないララァと同列に並べられるのに我慢ならない様子。憤然とWB部隊を迎え撃とうとしますが彼の実力やいかに? しかし、今まで「ガンダム」に異様に執着していたシャアですが、今回は何故か自分が前に出ず、着任したばかりのシャリア・ブルを単独出撃させます。シャリア・ブルの能力を試すためでしょうが、「ガンダム」相手では、並の戦力では歯が立たないのは予想がつくはず。少なくともゲルググが支援に出る方が万全な体制で迎え撃てると思うのですが、貴重な戦力をドブに捨てるような真似をするのはどういうことなのか? キシリア配下にいるシャアの元に、ギレン総帥が直接送り込んできたところに、妙な胡散臭さを感じていて(ギレンに心酔する人間を)部下として側に置いておきたくない(自分の行動がギレンに把握される危険がある)? ララァより能力の劣る戦力なら勝敗は予想がつくが、この機会に捨て駒として使い、ニュータイプ専用MAの戦力がどこまで「ガンダム」に通用するかみてみたい?、などと考えているのですが見当違いかな?、今ひとつシャアの意図が読めません。 ■いいぞ連邦のニュータイプ!! ついに実戦投入されるNT兵器[ブラウ・ブロ]がWB部隊を迎え撃ちます。コロニー内部はミノフスキー濃度が高く通信不能、砂嵐で目視モニターもよく見えない状態。そんな状況下でのブラウ・ブロの攻撃が始まる!有線ビットからの遠隔攻撃に翻弄されるWB隊。瞬く間にキャノンが撃破され、ガンダム一機でのサシ勝負へ突入する。 シャリア・ブル単独での出撃理由を色々考えていたのですが、状況を見守るシャアのセリフ 「ガンダムがいる分大尉の手に余るかも・・・」 などと、今頃になって発言しているところを見ると、シャア的にはな~んも考えてなかったようです(苦笑) 何故貴重な戦力を大切にしないのか?、部隊長としての資質に強い疑問を感じますが、シャアって結構場当たり的な人だからな・・・。こんな上官についてしまったシャリア・ブルが可哀想になってくる。 さて、[ブラウ・ブロ]は若干のデザインを変更しての登場。しかし、機体はデカイし、弱いとはいえ重力があるコロニー内部で浮いていられるのは何故だ・・・、ミノ粉利用で浮遊していられるのだろうか?ちょっと無理があるかな・・・?。 視界不良とはいえ、軽快に移動できない狭いコロニー内部空間での戦闘はブラウ・ブロの方が不利な気がしますが、そこは突っ込まず、スルーするしかないのかな。 こちらのツッコミとは別に、キャノン隊はビットのオールレンジ攻撃で一掃され、ここでダニー君が退場することに。うーむ、初登場以来やられキャラで可哀想な立場でしたが、ついに良いところ無しで死亡ですか。とても残念です。馴染みのないシン少尉退場の方がよかったかも・・・。 一方、アムロの攻撃を間一発でよけるシャリア・ブル。その顔は戦いの興奮と恐怖の緊張とが入り交じる複雑な表情。やっぱTV版とは別人だな。そして、その戦況を遠巻きに眺めるシャア。「まさかあいつ、ガンダム倒しちゃう?」などと余裕こいて呟いていますが、やっぱり全然シャリア・ブルが勝つとは思っていなかった様子。何がしたいんだろうコイツは。うーん、シャアの適当さも知らずに奮闘するシャリア・ブル、哀れなり。 ■私のプライドをキサマは傷つけた!! キャノン隊壊滅をのがれるため、アムロは単独[ブラウ・ブロ]をおびき寄せる。シャリア・ブルはアムロの意図に気づきつつも、ガンダムの後を追う。コロニーの地形を利用して、[ブラウ・ブロ]を誘い込むアムロの作戦にシャリア・ブルは動揺するが、自らのニュータイプ能力を信じ追撃の手をゆるめない。しかし、NT能力に覚醒しつつあるアムロの前には彼は既に敵ではなかった・・・。 圧倒的な攻撃力でキャノン隊を一掃した[ブラウ・ブロ]、続いてガンダムに襲いかかるが、窮地にあっても冷静に気配を読むアムロのNTの能力の前に、シャリア・ブルの攻撃が通じない。一方的な展開に逆上するシャリア・ブル。オリジン版シャリア・ブルは血気溢れるおじさんです。 出来れば今回はシャアが支援に回って逃げ切り、再びララァと共に捲土重来、再登場という展開を期待したのですが、シャアは助ける気は全くないようで・・・そうもいかなかったようです、読者的にはとても残念。 最後にシャリア・ブルの脳裏をよぎるギレンとの謁見の場面、そして力を発揮できる場所を与えられず、こんな場所で犬死にするしかない無念さ、まるで薄情な上司に見放され閑職に左遷されたリーマンのようです。他人事のようには思えません。合掌。 ■私こそが正真のニュータイプでなくてどうするっ!! 取り残されたキャノン隊はジョブ・ジョンの一機を残し壊滅、遅れてきたタンクが合流し救助にあたるが、彼らの元には敵のザク隊が迫りつつあった。 [ブラウ・ブロ]を撃破したガンダムだが、スレッガー達とも通信が出来ず、戦闘によりエネルギーモードも著しく消耗していた。そんなガンダムの前に現れるゲルググ!アムロの覚醒を認めつつも、ジオンを父に持つ自分自身が真のニュータイプとして優れた存在なのだと、シャアは自らに言い聞かせるかのように叫ぶのだった。 壊滅状態のスレッガー達に迫るザク隊。どーするの?この大ピンチ!?と思っていたら、ジョブの支援も受けずにタンクが一気にザクを殲滅・・・。いや、これタンク強すぎでしょ(苦笑) AE製最新79型砲に改修しているとか、装甲が厚いとか、スレッガーが優れたパイロットだとしても、これはちょっとやり過ぎたカンジがしますね。もう少し、窮地にあってもジョブのキャノンとの連携とか、地形を利用した作戦とか考えて、ピンチをチャンスにする工夫が欲しかったように思います。時々極端な展開でミリタリーバランス崩す時があるのですが、この辺りはストーリー練るの面倒だからエイヤッと片付けました・・・という雰囲気が漂いますね。ちょっと残念。 また、[ブラウ・ブロ]との戦闘で消耗したガンダム相手に吠えるシャア。アムロの能力の認めながらも、なお自分自身こそが真のニュータイプだと念じています。よっぽど負け続けたのが悔しかったのかな~、でも今の消耗しきったガンダムを圧倒しても、戦士のプライドは満たされないんじゃね? ■田舎のバスじゃないんだから・・・ 新型MS「ゲルググ」でガンダムを圧倒するシャア。エネルギーが消耗した状態に焦りを感じるアムロ。一気にケリをつけなければ負けると予感するが、アムロの操作にガンダムの性能が追いつかない!ゲルググのパワーに追い詰められたガンダムはついに地雷源へと落ちてしまう。爆炎に巻き込まれるガンダムを眺めるシャア。勝利を確信したその時、彼の視界の片隅にシャアを追いかけてきたララァの姿が映る。激しい爆音の中、ララァとアムロは互いの存在を強く認識するのだが・・・。 敵部隊を退けたスレッガー一行は、ビレッジセンターへと到達する。しかし、そこでセイラがタンクを降りると言い出すのだった。軍隊ではあり得ない話だが、あっさりと許可するスレッガー。果たしてスレッガーの真意は? ついに、アムロの操作にガンダムの性能も追いつかなくなってしまった。機体も消耗してズタボロ状態。そんなガンダムに勝ってそんなに嬉しいのか、シャアよ?確かに今回はゲルググ強すぎでした。スピードもパワーも圧倒してて、これがあのヘタレ・シャアなのか?と思えるほど。 シャア本人も気持ち良かったンでしょうね~、調子に乗って饒舌になってる様子です。ニュータイプでありながら自分に敵対するアムロを、自ら裁く!みたいな物言いです。しかし、これが彼の絶頂期であり、再び負け続けてしまうことをシャアは知らない。たとえララァが生身で近くに来ていようとも、かまわずにガンダムにトドメを刺しておくべきだったと思います。 そして問題なのがセイラ。仲間の前で突如タンクを降りるって、そんな馬鹿な(苦笑)確かに久しぶりに故郷に戻った感傷、という理由があるのでしょうが、戦時中なんですよぉ、軍隊なんですよぉ・・・。ここではスレッガーが何故か簡単に許してしまうのですが、ありえねえ・・・展開に無理があるよねえ。もうちょっと、自然な展開がなかったのかなあ~と悔やまれます。普通にTV版のようにバギー出して行方不明のガンダム捜索で単独行動、のほうがまだ自然だったと思うのだけど。 そして、シャアに至っては撤収中に「すぐ帰る!」と言い残してブラリ単独行動。ちょっ、おま、責任者なのにどこいくねん!そろいもそろって無茶する兄妹、こんな上官についてしまったマリガンもストレスたまってしょうがないでしょうね。そしてそして、駆けてくる馬の群れから一頭を選び、どすこーいと、素早く飛び乗ってしまうシャア、普通なら踏みしだかれて即死でしょう? しかも鞍無しなんですけど、ケツが痛くてしょうがないと思うのだが・・・、絵的には良かったけど、これではトニーのギャグじゃないか、これでいいのか?と、読者は激しく戸惑い、複雑な気持ちに襲われるでしょう(笑 ■OTとNTこそが戦うべきだったのだ!! タンクを降り、一人ビレッジへと向かうセイラ。しかし、想い出の地は今や廃墟と化し、木々も枯れ果てていた。あまりに多くの人が失われてしまった・・・その痛みと想いに胸を焦がすセイラ。そんな感傷に浸る彼女の元へ近づく人影が・・・生き別れた兄、シャアであった・・・。 想い出の地で再会を果たすセイラとシャア。兄の行動を批判するセイラと、自らの行動を正当化するシャア、全ては大儀のためと話をすり替えようとするが、それは独善だとセイラは否定する。どこまでも平行線な二人は別れ行くしかないのか・・・? この後不審な行動をした報いをセイラは受けることとなりますが、彼女の今後の処遇はどうなるのか?とても気になるところです。しかし、この章は「ララァ編」といいながら、ほとんど空気状態でララァが活躍することがなかったですね。残念です。 後編全体的には、サプライズな独自展開があって、ラストのシャアの独白があってと、なかなか面白かったんですが、一方で強引なうっちゃりがあったりと、ストーリーが練り込めていない安易な部分が目立ったようにも思います。安彦さんがもっと構想を練れるゆとりがあればなあ、とも思いますが、無理かな。 さて、次章からは「ソロモン編」へ突入。それが終われば終章「光る宇宙編」。残りは僅か、2年程度の執筆になりそうですね。そう思うとかなり寂しい気持ちになりますが、今後もシャアについては独自展開が用意されているようですので、期待して待ちたいと思います。 2008-12-14 shinji
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