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虹色のトロツキー
安彦良和(著)

01.きっかけと想い

安彦氏が満州モノの作品を描こうと思ったのは、まだアニメ製作を手がけていた頃、寝酒の肴に某写真集をながめていたのがきっかけとか。しかし、因縁めいたイイ男が美女とからんで、悪漢とのドンパチや派手なアクションがあって・・・というようなパターンは今更かなあ・・・という思いがあり、そこで目をつけたのが「建国大学」という舞台。

「建国大学」は五族協和という満州国スローガンの実践を謳い文句にして昭和13年に設立された国策大学、そこにひょっとしたら実在したかもしれないというような一学生を主人公にして「満州国を追体験」するドラマが描けないか?という考えに至りました。

その後早速、建大OB(一期生の一人)坂東氏や、辻権作氏の娘さんに取材。快く提供された資料を通して見たものは、建国初期の熱に浮かされたかのような時代。驚くばかりの熱心さ・性急さで、都市・法律・産業を興してゆく。しかし一方で植民地支配者としての顔を持つ日本人・・・。

当時、新天地・新国家への希望と期待に夢ふくらませ建国大学へ入学を果たした坂東氏は、現地の状況を見てあまりに違う現実に気づき、抗議の意思を込めて仲間とともに馬小屋篭城ストライキを行ったというエピソードがあります(虹トロ本編でこのエピソードが使われています)。そんな混沌とした時代を、古いアルバム写真や思い出話を通し感じたものは「非情な時代の青春の熱血」というキーワードでした。

しかし、建大学生を描くにしても、一方で物語を構築するには、やっぱりヒーローや美女や悪漢は必要だよね?と思い直した安彦氏。テンションをあげつつ設定をテンコ盛りにしていきます。この時代の「満州体験」というのは日本人が有史以来経験した国際的試練のおそらく最大のもので、この巨大な経験の中に、日本人が国際舞台で何をしなければならず、何をしてはいけないのかという教訓が沢山詰まっている・・・それだけに、安彦氏には描きたいものが沢山ありすぎたのでしょう。結果的にストーリーが長くなり、転換が多く焦点が絞りきれなかった印象が見受けられます。が、そこは後々語ってゆくこととしましょう。

※ネタ元:MARCO POLO 1994-02月号「建国大学の青春」参照

02.物語について・・・「建国大学編」

さて、物語の展開は長期に渡るため、まずは序盤「建国大学編」に絞って語りましょう。第一巻は、昭和13年6月からスタート、抗日学生であった主人公ウムボルトが辻政信に連れられ、建大に入学するところから始まります。

ウムボルトは、幼少時に家族共々暴漢に襲われ一人生き残った青年。襲撃時の一瞬残ったかすかな記憶・・・一人の男の顔、この謎の男がウムボルトの運命を翻弄することに。

男の名は「レオン・トロツキー」(※ウクライナ南部のユダヤ系自営農家に生まれ、革命運動に参加。1917年10月革命をレーニンと共に指導。レーニン死後は一国社会主義を唱えるスターリンと対立し29年にトルコに亡命)という革命家。

トルコに亡命したはずの人物が、1938年に新疆に現れたのは何故か?、何故ウムボルト一家を襲ったのか?、そもそもその男「トロツキー」は本物だったのか?それとも・・・?この大きな謎が、長い物語の鍵になります。

このトロツキーの記憶を持つ、ウムボルトを利用しようとするのが石原莞爾。彼は自分に心酔する辻政信を使って、ウムボルトを建大へとねじ込みます。石原の意図は何なのか?、この答えはすぐに分かるのですが・・・。

密かにウムボルトを呼び出した石原は彼に会い伝えます。「トロツキーを建大へ招聘する」と。なんとも突拍子もない計画・・・読み手としては、こんなに早く目的が明らかにされてしまうと、なんだか表向きな理由というか、この話には裏があるのでは?と勘ぐってしまうところ(実際読み進むと裏が見えてくる)

そもそもウムボルトは日蒙のハーフ。父親は深見圭介という日本人だった。当時、深見圭介は陸軍を除隊し満鉄へ入ったあと、新疆へ蒙疆鉄道延伸の調査に赴任したのだったが、その地で彼は「トロツキー」と親しくしていたという。その後のトロツキーの足取りは、メキシコ・アルアマタ・上海・・・様々な情報があるものの事実は判然としない。

そのトロツキーを見つけ出し、深見の息子であるウムボルトと引き合せようというのだが、ここで「ん?」となるのが、本当にトロツキーを見つけ出すことができ、ウムボルトと会わせたところで、一体どうなるというのだろうか?というところ。

親しくしていたという深見本人ならまだしも、当時子供だったウムボルトに会ったところでしょうがないと思うし、そもそも、その人物は深見一家を襲撃しているわけで・・・。できれば会いたくない一家の生き残りでしょう?? そこからなんで建大招聘に繋がるのか?・・・正直、話が明快でなく読んでてモヤモヤが残るのです。

単純に、トロツキーが本物かどうか、実物を見たというウムボルトに首検分をさせようということなら何となくわかるけど、それでも幼少期の朧な記憶なら信憑性低いだろうし、話に無理があるような気がします。まあ、追々新たな事実が語られ、分かってくるのかも知れませんが。

その後、建大講演に訪れた石原に、ウムボルトは問います。トロツキーはスターリンの敵、建大に招いたらスターリン(ソ連)は満州に攻めてくるのではないか?つまり、トロツキーを利用して満州国と中国をソ連との戦争に巻き込む意図があるのではないか?と。まあ、つまりウムボルトは石原の話に裏があると疑ってかかっていたようです。

この問いに石原はトロツキー招聘予定を認めながらも、トロツキーが要因となってスターリンが攻めてくることはないと言い切る。一方で、スターリンが攻めてこなくとも、ソ連と近々戦争になることを予言するのだが。(その予言はわずか22日後「張鼓峰事件」として的中する)

ウムボルトは、こうした石原・辻の思惑と、その石原の動きを伺う甘粕一派の狭間にありながら、一学生として建大で過ごす。入学当初は日本人に対して敵意を剥き出しにしていたウムボルトだったが、建大生の中で過ごすうちに偏見は薄れ、人種を超えた仲間意識が芽生えてゆく。まさにこれが「五族協和」の実現された姿なのだろうか?

こうしたウムボルトの建大生活のエピソードと、石原、甘粕一派の動き、トロツキーの謎を軸にして、第一巻は進行していきます。やがてウムボルトは父、深見圭介の恩師である植芝盛平や、銀巴里というクラブの歌い手麗花と出会うが、この伏線は後に繋がってくるところ。

この物語は、結構小出しにエピソードが語られ、それを語る人物の思惑が絡み、どの話が本当なのか?、嘘が含まれた話なのか?だんだん分からなくなっていく部分がありますね。読んでて混乱してしまって整理できない。

第一巻終盤では、ウムボルトを建大に押し込んだ張本人、石原が病気を理由に満州を離れます。石原を日本人の親玉と敵視しながらも、正義感(?)から彼を助けようとしたこともあるウムボルト。「夜遊びはいかん、学問をしろ」と諭す石原に、印象を改め始めたウムボルトだったが、ある日突然、淡い信頼感は音を立てて崩れ去る。

関東軍参謀に呼び出されたウムボルトは、新疆行きを命じられる。そして彼が頼るべき石原は既に満州にいなかった。「わからんのか?蒸発を黙認してくださるということだ」と不敵に笑みを浮かべる辻政信が小憎たらしい。

この事実にショックを受けヤケクソになるウムボルト。大きな運命に飲み込まれ、石原という後ろ盾も失い、抗う力を持たない自身の無力さを思い知る彼は建大から姿を消す。

さて、第二巻は「帰郷編」、故郷へ戻るウムボルトの前に、旧友ジャムツが現れます。運命に翻弄されるウムボルトに未来はあるのか?・・・つづく。

2007-07-08 shinji
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