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虹色のトロツキー
安彦良和(著)

本当の国が欲しい、
正しいことが正しくて、
どんな民族も争わず暮らしてゆける
自分たちの国が・・・

虹色のトロツキー (5)
amazon.co.jp

01.囮犬

昭和14年3月、ウムボルトは大連・桃源台の安江邸にいた。新聞には「謝文東帰順」の記事が。安江曰くは九軍の李華堂あたりは謝文東に倣い、残る筋金入りの共産主義である金日成・趙尚志の抗日聯軍の先行きも見えてきたのかもしれないと語る。一方で安江は、匪賊を押さえたところで満州は安心できない、世界に認められなくては駄目だとも言う。

ここで語られる安江の意図をまとめると・・・
  • 民族共和の理念(五族といわず何民族でも平等に仲良く暮らせる国)が本物であることを示したい。世界中で唯一それを実現できるのが満州国であるということを示さなければ、世界は決してこの国の存在を認めてはくれない。
  • それを実現するにはどうすればいいか?・・・ナチス・ドイツに迫害を受けているユダヤ難民を率先して保護し助ける。そうすれば、世界はナチスと日本が同類でないことを識るだろう。
  • そうすれば、ユダヤの強いアメリカの世論も好転するだろうし、日米が戦う最悪のケースも避けられ、満州国に民族共和の内実が確かにあるのだということを世界中に見せてやれる。
  • しかし、石原・辻の意図する「トロツキー計画」(ユダヤ自治州とトロツキーを起爆剤にしてソ連と戦争状態を引き起こし、否応なく日中戦争から手を引かせようという計画)は危険すぎる賭で、その代償としてこの危うい国、満州は吹き飛ぶことになるだろう。
・・・という流れになる。安江は、石原の軽挙を諫めるため、建大の中山先生を東京に送るとともに、特務機関を使って辻少佐の破壊工作を阻止するよう動く。そして、ウムボルトには自身の囮犬になることを要求するのだった。

今までの流れとは一転、再びトロツキー計画のただ中に巻き込まれるウムボルト。安江の要求に迷いを見せるも、ウムボルトの消息を追って来た辻少佐が安江に直言する態度をみて、「やつらより強くなってやる!」と意を決するのだった。このあたり、血の気が多いというか若者らしい反応なのだけれど、数々の場面をくぐり抜けてきたにしては、精神的にあまり成長できていないような気もします。

02.興安軍官学校での出会い

満州国は嘘の国家だから満軍には士官しないというウムボルト。自分は蒙古人だから興安軍になら士官すると告げる。安江大佐はこれを受け、ウムボルトを興安軍官学校の指導軍官として推挙するのだった。


興安軍・・・興安四省の直轄軍。省に居住する蒙古族の特性を考慮し、かつ隣接するソ連・モンゴルの脅威に備えるため特異な編成となった。兵員構成はすべて蒙古族。その指導に日系軍官が当たり騎兵を主体とした。総兵力およそ八千。

軍官学校に少尉として派遣されたウムボルトは、特異な存在から日系士官に色眼鏡でみられると同時に、その反発的な生意気さから目をつけられることに。本科一年第三班の指導に任命された彼は、日系士官達に猛反発しつつも、三班のメンバーと徐々に絆を深めてゆく。

そんなある日、ウムボルトは意外な人物と出会うことに。興安北警備軍司令 兼軍官学校校長代理である、ウルジン少将である。安江大佐からの親書を受け取ったウルジンはすぐさまウムボルトを呼び寄せる。呼び覚まされるウムボルトの記憶・・・「巨きなアブ(父さん)」・・・そう、ウルジン将軍は、深見の友人であり、幼少の頃ウムボルトと過ごした時期があったのだ。

ウルジンが深見と出会ったのは1918年のシベリアだった。その当時ブリヤートモンゴル族はボルシェビキと戦っていた。日本とアメリカはその戦いを支援したが、赤軍・ボルシェビキの猛攻に、ブリヤートモンゴルは東に追われる。その後日本の軍隊と合流し、一時はイルクーツクまで攻め返した。その日本軍に深見と安江がいたのだった。結局、戦いに敗れブリヤートモンゴルは三河地方へ移り住んだ経緯があった。

安江は日本に戻ったが、深見はそのまま現地に残った。外蒙(モンゴル)をソ連に奪われ属国にされないよう工作するという任務を与えられて。そのために深見は通遼に向かい、ウムボルトの母親と結婚しモンゴル人のようになった・・・。

ウルジンの話を聞いたウムボルは動揺する。父が任務のために母親と結婚した?そのためだけに?それではあまりに母がかわいそうだった、と涙ぐむ。彼の古い記憶には母の泣き顔と、寡黙に背を向ける父の姿が鮮明に残っていた。父親らしく振る舞わない深見より、当時一緒に過ごすことの多かったウルジンの方が、父親らしかったほど。

ウルジンはウムボルトの動揺をみて、深見は奥さんを愛していたと告げる。しかし彼にとっては軍人としての任務が一層大切なことだったのだと。同時に、深見の関わっていた計画の概要を聞かせるウルジンは、ウムボルトに言い聞かせる。仇を討とうと思ってはいけない。そう思ったらそれまでだと。自重して自分の生きる道を見つけ出せと諭すのだった。

ウルジンの登場で、トロツキー計画の核心に迫る。とどのつまり石原の計画は10年前に深見が考えた計画の焼き直しに過ぎなかったことがここでハッキリとする。様々な思いが交錯し、過去の記憶が蘇るウムボルトは複雑な思いに混乱する。

後半は軍官学校での日々が綴られる。日系士官との一悶着があったり、国境警備実習に向かったり。ウムボルトはここでも悩み続ける。父母を殺させた犯人を捜し出し仇討ちをするのか、それとも安江大佐の犬になって石原・辻の計画を邪魔するのか・・・どちらをやったとしても、彼はそこからどう生きてゆけばいいのか?

本当の国が欲しい、正しいことが正しくて、どんな民族も争わず暮らしてゆける自分たちの国が・・・葛藤する彼は心底そう考える。その思いが蒙古独立の考えにつながるとしても・・・。

ラスト付近には、ジョンジュルジャップに接触するジャムツが再び登場。もはや物語の主要人物から外れてしまったのですが彼はまだウムボルトの足を引っ張るため頑張ります。一方、安江大佐の邪魔が入りつつも奮闘する辻少佐の元に電報が届く。石原からの入電は「トキニアラズ ケイキョヲツツシムベシ」とあった。

この巻は深見のトロツキー計画の核心、ウルジンの登場がかなり重要な位置を占めています。後半ラストに向かってダムバドルジのエピソードを生かすため、学校内での日常や人間関係にスポットを当てていきますが、その辺りは功を奏している感じ。でも、ラストの強引に泣かせようとするのはごり押し過ぎかな?という印象が残ります。しかし、流転の馬賊のパートからは一転して内容の濃い展開になってきて面白くなってきました。次巻は上海に向かうウムボルト。トロツキーは果たして本物なのか?

2007-09-09 shinji
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