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虹色のトロツキー
安彦良和(著)

ただ知りたいだけだ!

記憶の向こう側を-----
虹色のトロツキー 2
虹色のトロツキー (2)
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01.帰郷・通遼にて

第二巻では、ウムボルトの友人であるジャムツ(孫逸文)等抗日運動家との接触、それを追う特高の楠部を縦軸に、そしてウムボルトの父の謎を横軸に展開、1巻よりはややアクション性は高い。後半は舞台を建大へと戻し、馬小屋篭城エピソードを絡めながら展開する。

父と同様に新疆へ向かうことを指示されたウムボルト。しかし彼は建大から姿を消し、故郷「通遼」へと舞い戻る。父、深見圭介とは何者だったのかを知るために。しかし、育ての伯父は忌まわしい過去を葬り去るかのように、父に関するものを処分していたのだった。

伯父は無残な死に方をした妹(ウムボルトの母)のように、ウムボルトを事件に巻き込ませないため、父・圭介の情報を処分していた。また彼自身、忌まわしい思い出を消し去りたかったこともあっただろう。

しかし、失った記憶を取り戻そうとするウムボルトは、そんな伯父の気持ちを察することなく、父の情報を追い求める。何度も夢に現れる、母が暴漢に襲われる光景。彼のトラウマを打ち消すには、どうしても過去の記憶を見つけ出す必要があったのだ。

そんなある日、憲兵隊にしょっ引かれたウムボルトは、そこで一つの写真をを見つける。その写真に写っていた男は、建大で合気道を教えていた「植芝盛平」であった。植芝はかつて出口王仁三郎とともに通遼で活動していた一人だった。そこで深見と植芝は知り合ったのではないか?ウムボルトの中で小さな糸口が見つかる。

一方、ウムボルトを追う男が一人。奉天機関の憲兵・楠部、かつてウムボルトをアカ学生として締上げた男だった。彼はウムボルトと抗日ゲリラのリーダーであるジャムツとが友人であることから、彼を泳がせてジャムツを確保する計画を企んでいた。

自宅への帰路、暴漢に襲われるウムボルトは、ジャムツの一派に助け出される。これはジャムツとウムボルトを接触させる楠部の仕掛けた罠だったのだが、二人はそれを知らない。久しぶりの再開を果たすウムボルト達だったが、ジャムツは抗日の同志として連絡を取り合うことを彼に要求するのだった。

ここで登場するウムボルトの旧友、ジャムツ。初登場時はクールで切れ者っぽい印象の彼だが、物語後半になるとかなり情けない男に描かれることに。この巻での活躍が彼の最初で最後の見せどころかも知れない。

このパートでジャムツの仮説が浮かび上がる
  • トロツキー招聘は混乱の元となる。石原莞爾が狙っているのはコミンテルン(モスクワに在った国際共産主義運動指導部)と抗日連との仲を裂き、国共合策を攪乱することにあるのではないか?
また、もうひとつここで明らかになるのがパインタラの「大本事件」、この事件は深見圭介の事件と繋がっているので、覚えておきたい。
  • モンゴル革命時、外蒙の赤化を恐れた日本が、大本をスパイとして送り込んだ。しかし、張作霖がこれを警戒、攻め滅ぼしたという。

ジャムツの部下であった銀巴里の歌い手「麗花」、ウムボルトは麗花とともに楠部の追っ手から逃げ延び、再び建大へと舞い戻る。新京への汽車の中で、ウムボルトは楠部と出会う。そこで語られる楠部の石原の謀略についての見解は、ジャムツの仮説と一致していた。
  • 中国共産党はまだアオく、理屈がなっていないので始末が悪い、そこでトロツキー招聘の噂を持ち出し、かつての党主流「陳独秀派」を元気付けようとした。
  • 「陳独秀派」はコミンテルンの指導(第一次国共合策)の失敗により大弾圧を受けて以降コミンテルンに反発、トロツキズムに傾倒している。
  • トロツキーと聞いて「陳独秀派」が色気づけば、中国共産党内部は混乱し、蒋介石やモスクワとの仲もこじれてゆく。
しかし、楠部は言う、まどろっこしい謀略を張り巡らさなくとも、アカと重慶(蒋介石抗日政府)を力づくで叩き潰せばいいと。かつて楠部の拷問にかかったことを思い出すウムボルトは、楠部の傲慢で権力でねじ伏せようとする姿勢に強い反発を感じるのだった。それと同時に、麗花との別れの際の言葉がよぎる。「これから先、新京に戻るあなたは日本人になるのか?」と。

02.再び建国大学へ

昭和13年9月、ウムボルトは再び建大へと舞い戻る。しかし建大ではひとつの事件が起こっていた。六塾の生徒が馬小屋に立てこもっていたのだ。(ここで取材のエピソードが使われる)

六塾の生徒達の主張は、五族協和を掲げた満州国だが、実際には日本人が威張り散らしている状態、建大建設時にも地元住民は追い出されて、その土地に自分達がいるという矛盾。このままでは民族協和は絵に描いた餅ではないのかという抗議の意思表示だった。

騒動を傍観するウムボルトだったが、そこに単身暗躍する辻政信が現れる。新疆の一件は忘れろという辻、そして父の仇をとり、ロシアの野望に立ち向かうために命を預けろと言い出すのだった。辻が力説するロシアの陰謀と深見圭介の謎とは?
  1. 清朝時代に広がった支那帝国は、辛亥革命の失敗でガタガタになった。その後ロシアの赤色革命が起こる。
  2. 次いで、外蒙(モンゴル)が赤化し独立、衛星国としてロシアにもぎ取られる。
  3. この時大正10年~13年、ウムボルトの父、深見圭介は工作員として通遼を拠点として内蒙古で働いていた。(先の大本事件と関係)
  4. 伊寧で深見一家が襲われている頃、新疆では主席・楊増新が暗殺された。これは楊増新のもと、平穏に治まっていた新疆を組み込もうとするロシアの陰謀、つまり外蒙と同じく、新疆も分断し属国化しようとしていた。深見圭介はこの新疆分断化と闘い消されたのだという。
  5. このスターリンの計画は、主席・盛世才がソ連に対して売国的譲歩を為し、地下資源を売り渡し、赤軍駐留を認めたことによって成功しかけていた。
  6. その為、片倉中佐は工作を急ぎ、ウムボルトを使って10年前の芽を掘り起こそうとしていた・・・が、辻と石原の考えは違う。新疆は既に手遅れであり、当面の急務は「満州」を守ること。満州の死活は東亜万民の死に繋がると。
この辻政信の「ソ連が当面の敵」という話は、石原莞爾の話を受けてのものだが、新疆分断と深見の事件との関わりはどうもこじつけ臭く感じるところがある。ウムボルトを工作員として利用するための理由付けで、事実は別に隠されているのでは?? これは、また読み進めば新たな事実が出てくるのかも知れない。

しかし、この辺りから、辻のキャラクターが生き生きと躍動し始めて面白い。安彦先生もこのキャラクターの使い方を腹に決めたようで、コスプレ(?)させながら、物語を引き立てさせるムードメーカーに仕立てていますね。

その後、辻との話とは別に動き始めるウムボルト。しかし、パインタラ事件から先の手がかりをつかめないまま。しかし、新聞記事を読み漁るうちに一つの記事に突き当たる。「ソ連要人亡命」「ゲンナジ・ヤン・ミリューコフ」、この写真に写るミリューコフの顔と、過去の記憶がオーバーラップする。ようやく、手がかりをつかんだウムボルトは、ミリューコフに会うため関東軍本部へと向かうのだった。

第二巻の要点は、ジャムツ・楠部の仮説、そして後半の辻政信の話。このあたりは覚えておきたいところ。読み進めると、どんどん色んな話が出てきて要点が分からなくなってきますから、パート・パートで押さえたほうが、全体の話が分かりやすくなるでしょう。さて、事件の真実はどこにあるのか?ようやく糸口を見つけたウムボルトですが、果たして核心に迫れるのでしょうか?・・・つづく。
2007-07-16 shinji
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