■ついに始まった[ユニコーン]奪還作戦。パラオ奇襲による先手攻撃が功を奏したかに見えたが、全てはフル・フロンタルの手のひらの上で踊らされていたにすぎなかった。バナージを泳がせ、ラプラス・プログラムを解読するため、マリーダを噛ませ犬に利用するフロンタル。交錯し共鳴する二人のニュータイプは一刹那互いの過去を垣間見る。一方、リディとミネバは戦線を離脱し地球へと向かおうとしていた。
今月は挿絵など含め50ページ掲載、マリーダの悲惨な過去話とか、デストロイモードでのクシャトリアとの戦闘など、非常に面白い展開でした。
■ユニブロ No.11ではMGユニコーンガンダム発売にあわせて、福井氏のバンダイ工場探訪記事2ページ。もう一つは、同じくMGユニコーン記事4ページ、変身手順を掲載しています。尚、MGユニコーンに関しては、「電撃 HOBBY MAGAZINE ( 2008年02月号)
」や、「ホビージャパン」などでも特集が組まれています。
■第4巻特装版は2008年4月26日発売予定、この特装版にはMGユニコーンに装備出来る「ビームガトリングガン」が付属(予約締切2008年1月25日)
01.物語について
■勝てない、はめられた
パラオに取りつき、脱出するMSを妨害するため、亀裂を破壊してゆく[ロト729]のナシリ。しかし、肝心のダグザからの連絡が入らず言いようのない不安に焦れる。奇襲成功と思われたのもつかの間、ナシリの眼前に赤いMS[SINANJU]が迫る。旧式の艦艇やMSを囮に、ほとんどの戦力を退避させていたフロンタル。そして一機たりとも生かして帰さんと牙をむくアンジェロがジェガンに襲いかかる。
え!?ナシリもう退場ですか?ほとんど活躍らしい活躍もないまま・・・(苦笑)勿体ないキャラの使い方するね。今月は結局ダグザの出番も最後の方しかなかったしエコーズは影が薄くなってきてるような・・・。
それにしても冷静沈着なフロンタル、全ては彼の計画通りに歯車は回りつつある。奇襲を予見して戦力を退避しておくあたりは、読みの鋭さにフロンタルの策士ぶりが垣間見えますが、今まで散々世話になったパラオを簡単に見捨てたり、日和見兵員とはいえ、仲間を囮にしたりと、その薄情さ加減は怖いモノがあります。絶対に友達にはしたくない人物ですね。
■失望されたくない、いや、嗤われたくない
パラオ炎上の中、ユニコーンで脱出するバナージ。外の戦況を確かめる合間にも、ギラ・ドーガがユニコーンに迫る。一方、ミネバと共にデルタプラスに搭乗したリディは、戦線を離脱するタイミングを計っていたが、罠にはまったネェル・アーガマを見捨てることが出来ずにいた。今戦って余分な推進剤を使えば目的地にたどり着けなくなり、逃げるチャンスを失ってしまう・・・リディの選択は?
そして戦場で再会するバナージとリディ&ミネバ、しかし、ノンビリと互いの無事を喜び合う時間はない。アンジェロの執拗な攻撃を受けつつも短い会話を交わし、バナージはミネバをリディに託すのだった。
リディの葛藤はよく分かる。惚れた女を救うためとはいえ、同じ釜の飯を食った仲間を見捨て、任務を放棄することになる後ろめたさ、軍人的にも人間的にも義に欠ける行為になってしまう。しかしそんな事態の時に、ミネバに失望されたくないとか、見損なわれたくないなどと、自分が相手にどう思われるか?という点に意識がいってしまうのはいかがなモノか・・・? ちょっと情けない部分もあるけど、それがリディらしさというか、若さというものでしょうかね?
また、ミネバの後押しセリフにしても、ちょっと在り来たりかな。彼女の行動原理というか、最大の優先事項は当初から「ラプラスの箱」騒動を鎮め、平和を願って行動しているのだから、この際冷徹になって[ネェル・アーガマ]を犠牲にしてでも戦線離脱するよう、リディに働きかける展開もアリだったかも(ダメですか?)
そしてバナージは、やっと逃げ出してミネバに再会できたと思ったら、今度はリディに連れられていくのを見送るはめに・・・。格好つけてリディに「男と見込んだ」などと発言したものの、あとのデストロイ展開では”貧乏くじ引いた!”と荒れ狂ってしまいますから、ホントは涙目状態だったのでは?(苦笑)
■我を、傷つけたな・・・
ユニコーン追撃の命令がマリーダに下りた。修復されたクシャトリアを駆り、ファンネルの群れがユニコーンに迫る。ビームガトリングガンで応戦するユニコーンだったが、クシャトリアの攻撃に翻弄される。激しい戦いの合間、一瞬の気配にクシャトリアのパイロットがマリーダであることに気づくバナージ。接触回線で説得を試みるバナージだったが、「敵の理屈」と、聞く耳を持たないマリーダに、バナージの怒りが爆発、NT-Dモードが起動する。
一方、レウルーラから戦況を眺めるフロンタル。既にユニコーンには盗聴器[サイコ・モニター]が仕掛けられ、NT-Dが起動すればラプラス・プログラムが自動送信されるよう仕組まれていた。フロンタルの狙いはバナージを泳がせ、NT-Dを起動させることで「箱」の所在を割り出すことにあった。NT-D起動には、ニュータイプの敵と戦わせる必要があるため、フロンタルはマリーダを利用するのだった。
強化人間の力量を発揮し、ユニコーンを制するマリーダ。しかし、トドメの一撃をファンネルに指示したとき、強烈な敵意を孕んだ”気”がユニコーンから放出される。
フロンタルの駒に利用されるマリーダ。フルちん、やっぱりこの人怖い人だよ。そして今月号一番の見所はここ、敵のファンネルを乗っ取り、自らの武器にしてしまうユニコーンの力。そして、[NT-D]の真実、ニュータイプを狩り出す抹殺装置、ニュータイプ・デストロイヤー・システム、ひいてはUC計画の全貌・・・。ここのあたりは、ちょっと中坊設定ですけども、読んでてワクワクしてきました。あんまり書いてしまうとネタバレになってしまうので、ここは是非本文を読んでみてください。
それにしても、[ユニコーンガンダム]の思惟(?)が波動となって伝わる描写部分は、皆川亮二氏の「ARMS」を思い出しましたね。これはバナージの深層意識なのか、それとも[ラプラス・プログラム]や[NT-Dシステム]が意思的なもの(人工知能?)を持ち始めたものなのか・・・はたまた[NT-Dシステム]が変換した[強烈な敵意]を、マリーダの意識が人格的な思惟として受け止めたものなのか・・・[ユニコーン]の謎は深まりますが、なかなか面白い展開になってきました。
■プルトゥエルブ。それが彼女の名前だ
暴走するユニコーンの圧倒的な力の前に、クシャトリアは大破。最後のトドメ、コクピットに迫るビームサーベル・・・その刹那、マリーダの意識がバナージに流れ込む。それはマリーダの凄惨な過去、プル・シリーズ12番目のクローンとして生まれた記憶、マスターを失い、仲間(姉)を失った彼女は、その後流浪の果て、人身売買で売り飛ばされ体を売る羽目に・・・。売春・妊娠・中絶・暴力で身も心もボロボロになった彼女は、やがてジンネマン等に身柄を確保されるのだった。
救い出されたマリーダは、以後新たなマスターのために戦い、生きる。暗闇に差し込んだ光を手放さないために、全ての罪と汚れが虚無に立ち返るその時まで・・・。そしていつか浄化の光に焼き尽くされることを望むマリーダに、そんな救いがあるものかと、バナージは心の中で叫ぶのだった。
当初からネットで噂されていた通り、マリーダはプル・シリーズの生き残りであることが判明。・・・しかし、ダブルゼータ見たことない私は、プルと言われましても全然分からないし、当然ながら特に感慨もわきません。こういう場合、ZZのストーリーを知っている方が、より楽しめるんだろうな、と思います(知らないのがちょっと悔しい)
それにしても、マリーダの凄惨な過去はありがちというか、ベタベタな転落人生ですね。こんな他の小説から取って付けたような過去バナでなく、ここはもう少しひねりが欲しいところです。しかしこの小説、購読層をどのくらいの年齢に設定しているのか知りませんけど、ちょっと鬱展開に耐えられない子供もいるかもね。
しかし、強化人間ってこんな悲惨な人生しか送れないものなのでしょうか?強化人間って設定だけで、死亡フラグが初期から立っているのですが、これで予想通り死んでしまったらマリーダ救いがなさ過ぎな気もしますし、正直予定調和で詰まらなさすぎる。「わかり合えた人との永遠の離別」というストーリーは正直もう見飽きました。このワンパターンを打ち破る新たな展開を福井氏に期待し、マリーダが幸せをつかんでハッピーに物語を締めくくってもらいたいものです。
■さて、ネェル・アーガマに再び戻ったユニコーン。今度はマリーダが捕虜として拿捕され立場逆転。ジンネマンはマリーダ救出のためにネェル・アーガマを追います。一方、マスドライバーを利用して地球へ向かうリディ&ミネバ。この二人は狭い密室空間で何日間宇宙を彷徨うつもりなのか?トイレとか食事とかどうするんだろう?などと疑問が浮かんできますが・・・、まあ、新陳代謝を減らす薬を打ち、眠りながら(半冬眠状態)向かうのが妥当な線でしょうかね。
次回からは新展開、当然ネェル・アーガマは「箱」を目指して、座標の示す場所へ向かい、ジンネマンとフロンタルもそれを追う展開になるでしょう。それと同時に地球へ向かったリディ&ミネバも描かれるでしょうから、場面がかなり飛ぶかも知れませんね。また、地球でテスト中という、ユニコーン2号機の存在も気になります。次回が楽しみですね!
2007/12/30 shinji
03.登場人物ほか用語一覧