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機動戦士ガンダムUCユニコーン
MOBILE SUIT GUNDAM UNICORN
0096/sect.7 
宇宙と惑星と -ソラトホシト- 3

福井晴敏 (著)・安彦良和(キャラクターデザイン)

  1. ユニコーンガイド キーワード集 [1] [2]
  2. プロローグ
  3. 0096/sect.1 ユニコーンの日 [1] [2] [3] [4] [5]
  4. 0096/sect.2 赤い彗星 [1] [2] [3]
  5. 0096/sect.3 パラオ攻略戦 [1][2][3]
  6. 0096/sect.4 ラプラスの亡霊 [1][2][3]
  7. 0096/sect.5 重力の井戸の底で [1][2][3]
  8. 0096/sect.6 黒いユニコーン [1][2][3]
  9. 0096/sect.7 宇宙と惑星と [1][2][3]
  10. 0096/FinalSect 虹の彼方に [1][2][3][4]
8 宇宙と惑星と 機動戦士ガンダムUC (8) 宇宙と惑星と UC7巻 黒いユニコーン

心に従え。それが俺からの最後の命令だ

今月は「宇宙と惑星と -ソラトホシト- 3」 64ページの掲載(挿絵含む)。物語は、ネオ・ジオンに占拠されたネェル・アーガマが舞台。クルー全員が人質としてMSデッキに集められる中、フロンタルはバナージに対し「LA+プログラム」が指し示した最後の座標を要求する。ミネバはフロンタルの真意を確かめるべく、「箱」を入手した後、彼が一体何をするつもりなのか問いただすが・・・。

ユニブロNO23は、UCと全然関係ない、福井氏の作品「0p.ローズダスト」の文庫化紹介でした。

あと、ガンダム30周年を記念して、ユニコーンVer.Kaのチタニウム・フィニッシュ版が3月に発売されるそうです。

カトキハジメによるメカ解説はお休み。



01.物語について

この時を待っていたよ。バナージ・リンクス! 

フロンタル&共和国軍の急襲と同時に、ジンネマンの裏切りを受けた[ネェル・アーガマ]は、彼らに投降し制圧される。アーガマの負傷者も含めた乗組員400名はMSデッキに集められ拘束される中、シナンジュのコクピットから姿を現すフロンタル。ギリガン等共和国軍のメンバーは、フロンタルとシャアの姿を重ね合わせ恍惚感に浸るが、一方で「特殊部隊マンハンター」と風の会でも噂になっているエコーズの機体をデッキの片隅で見つけたギリガンは不安感を覚える。

そんな中、フロンタル等とともに、ネオ・ジオンの正装で姿を現すミネバ・ザビ。その姿に「ジーク・ジオン」の歓声がデッキ内にこだまする。フロンタルがアーガマ・クルーを人質に「箱」の座標を引き出そうとしていることに言及するミネバ。フロンタルはその言葉を無言で受け止めるが、バナージには予想もしなかった展開に目眩を覚える。フロンタルに詰め寄ろうとしたバナージだが、アンジェロが阻止、喜々として後ろ手にバナージを羽交い締めにするのだった。

チェックポイントMSデッキに集められ人質にされたアーガマのクルー達。フロンタルは彼等の命と引き替えに「箱」の座標をバナージから引き出そうとする。バナージも自分の選択で400名もの人命が左右されるわけですから目眩がしてもしょうがないでしょうね。陰険アンジェロもようやくバナージを精神的に追い込んで悦に入っているご様子。

それにしてもギリガンは、フロンタルの姿にときめいたり、エコーズにビビッたり、ミネバの姿に興奮してみたり、クルクルと感情のブレが激しい男だな。この章では目立ったキャラですが、結局はネタキャラ。最後は虚しい散りざまで終わるのだろうな、という場面が目に浮かびます。

あなたは一番裏切ってはいけない相手を裏切った

MSデッキでは各班ごとに20人前後のグループに分けられ跪かされていた。オットーのグループにはジンネマンが付き、制圧下のルールを指示するが、「裏切り者」という叱責の声がジンネマンに向けられる。拳銃を引き抜いたジンネマンと、それを遮るオットー。激しい緊張が走る。

緊迫するデッキ内、整備班のグループに区分けされたタクヤとミコットに整備曹長のギブニーが囁く。ギブニーはミネバを人質にとり、混乱を引き起こすことで事態の打開を図ろうとする。騒ぎの合間にスラスター機械室へ向かうよう指示するギブニーに、タクヤは動揺する。間もなく行動に移った整備兵達、ギブニーは宙に飛び上がりミネバに体当たりしようとしたが、その時フロンタルの銃口が咆哮をあげた。

チェックポイントアーガマ・クルーやバナージの信頼を裏切ったジンネマンに辛辣な言葉が浴びせられる。感情を押し殺し機械のように冷徹な兵士となったジンネマン。彼の閉ざされた心にはもうバナージの想いは届かないのだろうか?

一方、ここで事態の打開を図ろうとしたギブニーが散る。ほとんど活躍しないままの退場なので、読み手としては彼の死にあまり衝撃を受けないのだが、バナージ達としてはやり場のない怒りで激しく動揺してしまうところ。ミコットに至ってはミネバに攻撃的に体当たりしてしまいます。命知らずというか、もともと気性の激しいキャラだったので行動に違和感はないですが、その場の感情だけで衝動的に行動したら殺されちゃいますよねえ、目の前で見せしめにギブニーが殺されたばかりですし。

それと、ミネバとミコットの絡み合いの場面で、メッセージが渡されるわけですが、ミネバはこのメッセージをいつの間に作ったのでしょう? ちょっと手際が良すぎて、作者のご都合的に見える部分もありますね。

無視すればいい、というのが自分の考えです

艦長室隣の応接室で、フロンタル等に「箱」の座標を要求されるバナージ。クルーを人質にとられ選択を迫られるバナージだが、フロンタルはバナージに対し「才能」という言葉を投げかける。バナージの才能が必要だと、ネオ・ジオンに協力するよう誘うフロンタル。しかしバナージは、その才能を「人殺しの才能」と切り捨てフロンタルを拒絶する。

やり取りを見守るミネバは、自分も「箱」の座標を知っていると告げ、教える条件としてフロンタルに「箱」を手に入れ何をなさんとするのか、その理由を問いただす。フロンタルはそれを受け、自らの目的を語りだす。全艦放送で流されるフロンタルの目的とは・・・?

チェックポイントフロンタルの目的がいよいよ語られます。宇宙移民者の独立、自治権の確立を頑として認めない連邦、ならばもう認めさせる必要はなく、いっそ無視してしまおうというのがフロンタルの目的でした。話を整理すると・・・

1)連邦政府(アースノイド)の意識

■連邦はスペースノイドを棄民として捉えており、アースノイドより劣った者という認識がある。
■その劣った者達が主権を叫び、アースノイドと同列に扱うことを要求してくる。その要求を受け入れたとたん主従関係が逆転することを怖れている。

2)何故主従関係が逆転するのか?

■地球圏の生活は、エネルギー、食料、経済活動、すべて七つのサイドと月があるからこそ回っている。地球という惑星単体では、もはや20億のアースノイドすら賄えないのが実態である。
■しかし、スペースノイドは逆に地球を切り離しても十分に自活することが出来る。
■全てのサイドが団結すれば、地球は経済的になんの価値もない田舎になり果てる

3)フロンタルの目的

■企業活動主導のもと、各サイドは一見当たり障りのない条約や協定を積み重ねる。
■最終的には共通外交と安全保障を実現する連合体(サイド共栄圏)を創設する。
■地球を排斥したドーナッツ状の経済圏を確立すると、地球連邦は立ち行かなくなる

こうしたフロンタルの目的にも問題点がある。共和国の自治権返還期限が迫っているということ。共和国が元のサイド3に戻ればサイド共栄圏への流れも生まれなくなる。いかにして解体期限を延ばすのか・・・?そんな時に降ってわいた「ラプラスの箱」の一件。「箱」を使って共和国解体の期限を引き延ばす、それがフロンタルの真意だった。

なんというか、意外に地味なプランを練っていたフロンタル。シャアのアクシズ落としのような華々しい計画じゃなくてちょっと残念かも。実はもっと隠された真意があることを望みますが、残りあと一章では展開は望み薄か??

私の知っているシャア・アズナブルは本当に死んだな

淡々と流れ出すフロンタルの艦内放送に戸惑う兵士たち。その場で直に聞いているバナージ達も、感情のない機械のように語り続けるフロンタルに薄ら寒さを感じていた。しかし、フロンタルの真意を聞いたミネバは「現実的すぎてかわいげがないよ」と一蹴する。調和も革新もなく、弱者と強者が立場を入れ替えながら続く未来・・・、隕石落としを決行したシャアの狂気、熱情からほど遠い狙い。シャアの再来を自認する男が本当にそれで良いのか?、と厳しく問いただすミネバ。それに対し、フロンタルは自らはただの器であり、注がれた人の総意に従って行動するだけと、突き放す。

一方、MSデッキでは隙を伺っていたタクヤたちが計画を実行に移す。腹痛を装って医務室へ向かうことが出来たタクヤ達は、同行するギリガンに襲い掛かる。

チェックポイントフロンタルの現実的なプランに失望したミネバは、最後に「箱」の座標を伝え応接室を後にする。フロンタル・プランが、結局は旧来からの過ちを繰り返すだけの愚行にすぎないと、ミネバが思うのも仕方ないかも。堂々巡りの輪の中には希望も、未来も感じられないですし、過去の戦争での教訓が活かされない・・・。

ミネバから見たフロンタルは未来への理想も、希望も、絶望の淵で喪失した男が、情熱を置き去りに、すっかり醒めた目線で虚ろな機械のように動き続けるだけ、といった印象でしょうか。

ミネバの感じた大きな失望感は、フロンタル計画だけならず、もし彼が本物のシャアであれば革新への情熱を失うことはないと、信じていた部分があったからかも。フロンタルの他人事のような態度は、そんな微かなミネバの希望も打ち砕いてしまったのですね。

一方、隙をうかがっていたタクヤ達は、医務室に同行するネタキャラ・ギリガンに襲いかかります。股間を蹴られ、ハロに踏み台にまでされ、なおかつ子供時代がフラッシュバックし「弱虫ギリガン」というフレーズがギリガンの脳裏に流れる。凄い劣等感の固まりですね彼は(苦笑) やっぱりこんな扱いなのか・・・不憫なキャラクターだ。

もう人ではなくなっている・・・この男は何物だ?

先の一悶着の際にそっと渡されたミネバのメッセージ。そのメッセージを信じて医務室に向かったタクヤ達はそこでミネバと落ち合う。ミネバはタクヤにギブニーの託した計画を実行するよう指示する。同行していたハサンにはデッキに戻り、エコーズ達の捕縛を解くよう指示、ガエルにはバナージ救出を指示する。そしてミネバは、医務室に横たわるマリーダに語りかける。「私と一緒に戦って!」と。

ミネバが消息不明となった件はすぐさまフロンタルの知るところとなる。応接室ではジンネマンとフロンタルが対峙していた。サイド共栄圏構想を黙っていたことを詫びるフロンタル。しかし、ジンネマンにはもうサイド共栄圏やミネバの処遇など興味のない話だった。ただ疲れた、何もかも・・・ジンネマンの虚ろな心を言葉で翻弄するフロンタル。人にも世界にも絶望した男・・・この男はもはや人ではない?では一体「何物」だというのか・・・?

一方、艦内ではいよいよ反撃ののろしが上がる。ミネバを信じ行動を起こしたタクヤ達はアーガマのバウ・スラスターを操作し、艦内に激震が走る。大混乱となった艦内で反撃に出るエコーズやクルー達、果たしてアーガマ奪還となるか?

チェックポイントここにきてマリーダを揺り起こすミネバ、重傷のマリーダが何処まで動けるというのか?福井さんはこのままマリーダを殺す気なんでしょうかね?マリーダ復活劇がこの後続きます。

そして、フロンタルとジンネマンのシーン。互いに人生に疲れたオッサンの会話が繰り広げられます。終盤になっても未だにフロンタルの正体は謎です。ジンネマンは話してて何者なのさ?と、今更恐怖してグダグダ勿体ぶっていますが、読者的にはもう正直シャアであってもなくても、どうでもいいですよね。どうせ、正体も分からないまま死んでしまう(行方不明含む)キャラでしょうし。過去「シャア」と呼ばれた男でも、その信念が根こそぎ消失した、「魂の抜け殻」となった男はもはやシャアではないと、そういう事ですかね?



現在に絶望している者に、未来を語る資格はない

混乱が続く中、ガエルに救出されたバナージは、敵機無力化のためユニコーンへ向かう。しかし、いち早く行動していたフロンタルはシナンジュに搭乗し、バナージを制止する。言葉を弄してバナージの心を翻弄するフロンタル。千々に乱れるバナージだが、その時、マリーダの声が聞こえる、「バナージ、[それでも]と言い続けろ」と。

MSデッキの階下から、クシャトリアのファンネルが飛び上がり、一瞬で敵機を包囲する。クシャトリアに同乗するミネバは武装解除を呼びかけ、フロンタルの計画を否定する。形勢は一気に逆転したかに見えたが、クシャトリアのコクピットにジンネマンの声が響く。コクピットを開け、ファンネルの包囲を解除せよと・・・。

チェックポイント人の可能性を嗤い、調和も進化も否定するフロンタル、そして暗闇に立ち止まらず、自ら進まなければ未来は訪れないと説くミネバ。相反する二人が対峙する。しかし、形勢逆転も束の間、ジンネマンの命令に抗えないマリーダは武装解除してしまう。

逆転につぐ逆転でハラハラしつつ、ローゼン・ズールに挟まれるミネバには死んでいいよと思ってしまう俺がいる。やっぱりミネバは嫌いなまま物語は終わりそうだ。

この後、ギリガンの哀れな最期が描写され、空気扱いのリディは最終章に向け飛び立ちます。既に最後の座標はフロンタルに知れ、ネオ・ジオン組と、アーガマ組のデットヒートが続きます。果たして最後に「箱」をゲットするのはどっちでしょうか?そして忘れ去られているサイアム・ビストはどこにいるのでしょうかね?いよいよ、次回最終章へ突入です。
2009/03/08 shinji

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