■今月は40ページ(挿絵等含む)の掲載。新章「黒いユニコーン」がスタートです。前回ラストで現れた「バンシィ」に倒されたユニコーンは、ラー・カイラムに収容される。そこには何故かアルベルト等ビスト財団が乗り込んでおり、艦の主導権を握っていたのだった。マーサの言い掛かりに動きを封じられるローナンはミネバを引き渡さざるを得ない状況に。一方、捕らわれたバナージはユニコーンを起動するよう強要されていた・・・。
■ユニブロNO.18では、ブライトの軍歴紹介。電撃ホビーマガジンにて、UCの名シーンを模型ジオラマで再現する連載企画のCMなど。
尚、追加情報として10月に6巻「重力の井戸の底で」が発売予定です。
■カトキハジメのメカ解説はお休みでした。
01.物語について
■貴様達、なんの権限があって・・・!
ラー・カイラムに乗り込む黒い機体「バンシィ」、その肩にはユニコーンが担がれている。いつの間にかアルベルト等ビスト財団がラー・カイラムの主導権を握っているのはどういうことなのか?艦に戻ったリディも驚きを隠せない。一方のアルベルト等は捜索するつもりでいた「ユニコーン」に、出会い頭に捕獲できた幸運に興奮していた。艦のクルーを制し、ユニコーンのコクピットを強制的に開くアルベルト。コクピットには気絶したバナージが、そしてディスプレイに表示された「La+」のロゴ。ラプラス・プログラムが新たに開示した情報は・・・?
前回ラストから急展開だったので、今回は序盤からバンシィVSデルタプラスの戦闘になるのか?と考えていましたが、一方でバンシィとデルタでは勝負にならないか?じゃあ、どう展開するんだろう?、バンシィがユニコーンを捕獲しても、ちんたらドダイに載せてるんじゃ脱出出来そうもないしなあ~、などと色々想像していました。
が、結果はラー・カイラムに財団が乗り込んで、彼らの活動拠点にしてしまうという展開で、ちょっと驚きがありましたね。マーサの影響力恐るべし、どんだけ権力とコネクション持ってるンだよ・・・?
■彼女を引き渡してください
ダカール事件から一日半が経過、死者四万人余り、負傷・行方不明者多数、瓦礫の原の惨状をテレビで確認し、改めて罪悪感を感じるローナン。そして彼の元には一本のホットラインが入っていた。相手はマーサ・ビスト・カーバイン。ダカール事件にいち早く対応し、ラー・カイラムに乗り込む行動力で、ローナンの機先を制する。
更にそれだけに止まらず、マーサはローナンに揺さぶりをかけてくる。彼女の言い掛かりは、「移民問題評議会(ローナン)が連邦宇宙軍再編計画の積極的推進を行った」と。彼女の主張するシナリオとはつまり・・・、
- 今回の事件で地球にもまだ脅威が存在していることが明らかになった。
- 共和国解体期限までにジオン勢力(テロリスト)を一掃する為、宇宙軍に加え、地球上の三軍にも再編増強を促す必要性が高まった。
- この軍再編の動きは莫大な経済効果につながり、その結果(ダカール事件での損失以上に)利益を享受することになるのは一体誰なのか・・・?
更にマーサはマスコミ操作を臭わし、ついにはミネバの身柄も要求する。 移民問題評議会に追及の矛先が向かった場合、当の議長がジオンの姫君を匿っている事実が判明したら・・・!ローナンはとぼけつつも、予め用意していた対財団用カードを切るが・・・ここで彼が取る選択とは?
事件の死傷者4万人以上とはかなりの惨状ですよね。ちなみに(比較にはならないのですが)現実におきた「阪神・淡路大震災」での被害が死者6,437名・負傷者43,792名となっており、ダカール首都のみの局地的なテロで、これだけの被害というのは甚大と言わざるを得ませんよね。ダカールでは首都(特に議事堂周辺)に人口が過密状態にあったと脳内補完するしかないかな? しかし、これだけの規模の事件だと、歴史の谷間に埋もれるような話では無くなってきているような・・・。
一方、ローナンに直接揺さぶりをかけてくるマーサ。マーサが凄すぎるのか、単にローナンがヘタレなのか?今回はローナンが一方的にボコられて完敗した感じです。ここでは政治的な駆け引きとか、経済界・マスコミを利用したカードのぶつけ合いが面白かったですね。結局、切り札は全てマーサが持っていたので、ローナンが手も足も出ないまま一方的に負けてしまったところが、読み手としてはとても悔しい。ローナン諦めが早すぎ!もうちょっと頑張れよ、と。息子のリディの立場はどうなるのさ??みたいな。
ローナンの弱腰はさておき、物語の合間に、心理戦含めこうした政治的駆け引きといった描写も差し込まれていて好感。今後はもう少しこういった場面を増やしてくれると面白いかも。MSのドンパチだけでは飽きますしね。
■理念は正しくても、人の感情は従えない
マーセナス邸を抜け出したミネバ。あてもなく徒歩で脱出を図るも、辺りは夕闇に包まれ立ち往生する。行く手にあった食堂に入りジャンクフードの食事を取る彼女。気さくな店の主人と話し込むうちに、自身が何もせず立ち止まり、ただ逃げだそうとしていただけではなかったか?と気づく。しかし間もなく舞い降りてくる追っ手。SPに囲まれた少女の顔が「ミネバ・ザビ」に変わる瞬間、彼女の中で覚悟が固まっていた。
長いこと空気キャラとなっていたミネバ。ようやくの再起動です。ここでは、外交のカードにされることを避けるため脱走したミネバが、フロンタルの脅威を感じたり、アースノイドの店のオヤジと宇宙移民の事や、「人の善意」について話し込むうちに、(何故か?)自分が逃避していたことに気づいちゃう展開。
でも、逃避してないで行動を起こさなきゃ!と「既に」気づいているからマーセナス家から出てきたのに、今更店のオヤジとの会話で気づかされ改めて再確認、というのは無駄なエピソードのような気もしますね。気づきにつながる話の流れも正直分かりにくかったし、そもそも、こんな禅問答する店のオヤジは嫌いです(苦笑)、見ず知らずの娘にこんな暗い話するオヤジなどいねーよ・・・と、醒めた見方をしてしまう私がいるのですが、皆さんはこのパートどう思いましたか?。
■やれやれ・・・噂通りの妖怪ですな
ラー・カイラムに乗り込んだマーサは、艦長室でブライトと向き合っていた。参謀総長の名を使い、ブライトを懐柔しようとするマーサだが、ブライトも歴戦を潜り抜けてきた古狸。簡単には言いなりにはならない。しかし、一方でローナンとの接点も潰されており、ダカール事件が財団に利を与えている流れもある。八方ふさがりになったブライトは独自行動を起こす答えにたどり着く。「ルオ商会に連絡を取れ」ブライトはメラン副長に指示するのだった。
全ての主導権を掌握したマーサ。今度は標的はブライト。自分に従えば見返りがあると懐柔しようとするが、ブライトは頑なな態度を崩さない。実際には内心ヒヤヒヤのブライトとメランが面白いですね。しかし、ここで出てきたキーワード「ルオ商会」、ハヤト・コバヤシの名義を使って接触を図ろうとするブライトの意図が何なのか?気になりますね。でも、ハヤトはZZで死亡していることになってますが、あくまで名前だけの利用に止まるのか、本編に生きて出しちゃうつもりなのか?福井氏の今後の展開に読者もヤキモキしているでしょうね。
■父親への義理立てか?
一方、囚われのバナージは取調室で尋問を受けていた。ユニコーンを起動し、ラプラス・プログラムのデータを呼び出すよう協力を促す尋問だったが、バナージは頑として応じようとしない。アルベルトは取調人を外させ、バナージと二人で話すことに。
データを呼び出すにはバナージの感応波(意思)が必要だ。しかし何故、意思による制御が可能なのか?アルベルトはバナージが「強化人間」だからだと見立てていた。アルベルトの言葉に動揺を隠せないバナージ、脳裏には「私の同類かも知れない」というマリーダの言葉が蘇るが、バナージはそれを否定する。親子の強力な血のつながり、その関係があるから理屈を越えた力が生まれると。
しかし、アルベルトもまた、親子のつながりなど生物学上の定義だと言い切る。この言葉はマーサの言葉なのだが、彼はそのことに気づいていない。そして、「箱」を解放しようとしなければ、一連の事件は起こらなかったと、管理された限定戦争と経済の歯車の回転、そうした財団とアナハイムのコントロールこそが人類の秩序につながると、力説する。
こうした話にバナージは、今まで関わった人達とのつながりの中で、結果今の自分がここにいる、だから皆が納得する答えを見つけ出さなければ「箱」の処遇は決められないと考えるのだが・・・。
ここはアルベルトとバナージの問答。知らぬ間にマーサの言葉に縛られているアルベルトと、今まで関わった人達との繋がりの中で、自らを模索するバナージが対照的。バナージ自身、皆が納得する答えというのは難しいですけど、よりよき結果を導き出すため苦悩している姿がいいですね。
そして、以前からチョロチョロと出てくるバナージの「強化人間」疑惑がここでも語られます。アルベルトは「強化人間」でなければ「ユニコーン」をそこまで制御できないと考えており、確かにそれは的を得ています。幼い頃、カーディアスから訓練を施され、母親がそれを拒絶して離縁したのですが、幼い頃の訓練だけでは、今のユニコーンへの適応力はちょっと異常ではありますよね。今後はアルベルトとの決着以外にも、「強化人間」疑惑についてどうまとめるのか?も注目点です。
■納得いかねえって、顔に出てましたぜ
連邦軍の警戒レベルが臨戦態勢まで高められている中、監視をすり抜けつつ、フル・フロンタルと連絡を取るガランシェール隊。ユニコーンが開示したデータはフロンタルのレウルーラには届かず、現時点で握っているのはガランシェールのみ。そのことを含みつつ、ジンネマンは今回のダカール事件について、フロンタルの真意を問いただす。
フロンタルはその問いに「世論の強度」を確かめたかったと告げるが、この答えにジンネマンの心は一方の気持ちに傾いてゆく。マリーダはおろかミネバの事すらふれようとしないフロンタルの姿勢に不信感を募らせるクルー。フロンタルとの通信が終わるとジンネマンは進路変更を命じるのだった。
チョロチョロと離反フラグの立っていたジンネマンですが、ここでフロンタルの非情な姿勢に離反するガランシェール隊。再びユニコーンを奪回し、マリーダやミネバを救出する。しかし、補給の得られない現状でどこまで行動できるのでしょうか? こうした動きは死亡フラグに直結しそうですが、今後の彼らの動きがどのような流れにつながるのか?楽しみです。
■これが大人のやることですか!
ラー・カイラムのMSデッキに陣取るビスト財団。そこには禍々しい黒いMS「バンシィ」が「ユニコーン」と共に鎮座している。リディ、三連星等クルーがその様子を見守る中、新たな来客がやってくる。現れた小型ジェット機から降りてくる一人の少女・・・「ミネバ・・・?」リディの胸中に衝撃が走る。彼女の安全と交換条件に、ここに来たはずなのに・・・!思わずリディは駆けだしていた。
一方のバナージも、その様子を収監室のモニターで確認していた。混乱するバナージに、アルベルトは言い放つ「言ったはずだ嫌でも協力することになると」・・・、そう、マーサ等はミネバを利用してバナージを操るつもりだったのだ。アルベルトはビスト家の呪われた血筋を語り出すが、隙を突いて収監室を飛び出したバナージはミネバのいるMSデッキへと駆けだしていた・・・。
ザビ家の運命と闘うミネバ、父親に裏切られたリディ、ビスト家の呪われた血筋に翻弄されるバナージ。3人とも家系の呪縛に縛られ、もがく姿が痛々しいのですが、果たしてこの先待ち受ける三人の運命は・・・?
そしてこのパートで現れるマリーダ。アルベルトには「プルトゥエルブ」と呼ばれていますが、ミネバに目移りした(いや、違うか?笑)バナージを拘束して痛めつけます。やはりバナージはこれくらいボコられないと面白くないですね。
さて、ラストは場面変わり、ニューギニア諸島のジオン残党へ。ダカール事件後、連邦軍に追い詰められる残党分子。彼らの元に届く協力を求める信号とは・・・、次号はガランシェール隊の反撃でしょうか?次号までしばし待たれよ!
2008/08/31 shinji
03.登場人物ほか用語一覧