安彦良和-WORLD WorkList-Illustration 機動戦士ガンダムユニコーン[0096/sect.5 重力の井戸の底で 1] |
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男の一生は、死ぬまで戦いだ■新章「重力の井戸の底で」がスタート。前回ラストでガランシェールと共に、地上へ落ちたバナージ。当初の予想コースを外れ落着したのは、アフリカ大陸・サハラ砂漠だった。砂に埋もれたガランシェールからはMSを出すことが出来ない状態、救援部隊を呼ぶことも出来ず砂漠で立ち往生するジンネマン達。一方のバナージは失意のドン底で惚けてしまって使い物になりそうもない・・・ジンネマンはバナージを張り倒して気合いを入れようとするのだが・・・今月は挿絵など含め50ページ掲載でした。
■ユニブロ No.15は、単行本4巻発売記念(5月10日実施)福井晴敏サイン会記事。尚、カトキハジメによるメカ解説はお休みです。 01.物語について ■シーゴースト 大西洋の深海を探索する連邦海軍潜水艦[ボーンフィッシュ] 彼らの任務は落下したネオ・ジオンの舟(ガランシェール)を探し出すことだった。ガランシェールが海中に潜んでいるものと思いこんでいる連邦軍は「水圧で外装が軋む音」に焦点を当てて探索していた。耳の良いソナー担当のアディは、奇妙な音を捉えるが、艦のデータベース照会にも反応せず、上官も取り合おうとしなかった。肩を落とすアディに、同僚のゲノンは「海の幽霊」の噂話を聞かせる。 SOSUSで拾われているという「正体不明の音源」、システム・エラーだという見方が多勢だったが・・・ゲノンとのお喋りや、自身の考え事に夢中になりかけたその時、異音が彼らの鼓膜を震わせた。異常な速度で急速接近するアンノウン!警報が鳴り響く中激しい衝撃が走る艦内。これが噂のシーゴーストなのか・・・? 地上落下後のバナージ達から始まるのかと想像していたのですが、扉絵&冒頭から潜水艦の描写でスタート。「ローレライ」のデジャヴ!?などと激しい違和感を感じましたが、新たな登場人物もちゃんと名前が付けられているし、父親との経緯なども語らせたりするしで、また違った角度から物語が進行するのか?と読み手も混乱気味。 結局のところ、ちょっと出で始末してしまうという展開で・・・え?こんだけのために長々とアディの描写を続けたの??と、福井氏の作品が長くなりがちな原因を垣間見たようです。まあ、氏得意の潜水艦を描写したかっただけではないのか?とも思えますが・・・シーゴーストの不気味さが伝わってきたのは良かったかな。それと、家族が地球に残るために海軍に入る、なんていう設定も面白かったかも。 ■我ら「ドバイの末裔」が背負う百年の恨み 場面変わり、シーゴースト側の描写。シーゴースト側の正体は、AMA-X7[シャンブロ]というモビルアーマーであった。搭乗員はマハディ・ガーベイと3人の子供達。彼らの目的は連邦海軍同様、ガランシェールを捜索することにあった。しかし三日間に渡る捜索も虚しく、発見するに至らなかった彼らは一時捜索を中断し、別に降下してくる「袖付き」のHLV機回収へと向かう。 ここではほとんどを[シャンブロ]についての解説に終始した感じ。何故そんなに速く移動できるのか?という疑問は、ミノ粉理論で全て解決されちゃいました。そして待望の新キャラが登場、ガーベイ一家(なんかヤッちゃんみたいな呼び方ですけど)の皆さんが「箱」争奪戦に参加。 彼ら、特にマハディが野望剥き出しで良い感じ。6年余りもの雌伏の時期が終わりを告げ、前線に出て[シャンブロ]が期待通りの働きをするのが嬉しいのでしょう。そして「ドバイの末裔」である彼らの百年の恨みとは、当然連邦に向けられたものでしょうけれど、どんな背景があるのか、これからの展開が期待できそうですね。 ■飼い慣らせるかな? 大西洋上で消息を絶った[ボーンフィッシュ]についての報告がローナンのもとへと届く。新たな「箱」の犠牲者に呻くローナン。もっともこの犠牲の拡大には、連邦の政策にも問題があるのだが・・・。 そしてもう一つ、本題である資料がパトリックから差し出される。テッド中将経由で入手したリスト、そこにはロンド・ベル司令であるブライト・ノア大佐の名前が挙げられていた。ローナンは、財団の息がかかっていない手駒を欲していたのだった。ロンド・ベル所属の[ネェル・アーガマ]への連絡が途絶していること、この艦がテロ事件に関わった件を利用してブライトを取り込もうというのがパトリックの戦略だった。ローナンはパトリックに会見の段取りを指示する。 ここでは、失業対策のために破壊された監視網を復旧させていない事情など、政策の裏話がチラリと垣間見られて面白いのだが、やはり本題は軍の本流から外れているブライトを手駒にして、ローナンが何をしようとしているのか?が、気になるところですね。やはり財団と渡り合って「箱」奪取を狙っているのか・・・ミネバの処遇問題もありますし、今後どのように展開させるつもりなのか、ここの部分は、まだまだ先が読めませんね。 このローナンの話の後、シンシア&ミネバの会話シーンがあるのですが、特にここで語るべきところはありません。相変わらず「空気状態」なミネバです(苦笑) ■シムーンが吹かんよう祈っててくれ アフリカ・西サハラの砂漠に不時着して三日、ガランシェールは砂丘に突っ込み、更に二度にわたって吹き荒れた砂嵐のために、砂山にすっぽり覆われてしまった。この状態ではMSを出すことも出来ず、無線も壊れてしまったために救援を呼ぶことも出来ないまま立ち往生していたのだった。しかし、この灼熱地獄に長居は無用、連邦は血眼になって船を捜索をしているのだ。敵に見つかる前に、早々に味方と連絡をつける必要があった。 ガランシェール搭載のMSは格納庫から出すことができないが、ユニコーンなら使える。しかし、肝心のパイロットであるバナージは、一日中放心状態。ギルボアの一件がトラウマとなって心が折れてしまったのだ。 このまま救援を待ち続けるか、艦を破壊してMSを出し助けを求めに行くか・・・思案するジンネマンだったが、別の選択肢を彼は選ぶ。「徒歩で町に向かう、お前俺につきあえ」、バナージの胸ぐらを掴み、ジンネマンは鉄拳を見舞う。「いつまでも被害者根性でふて腐れるな」と喝を入れるジンネマン。唐突な衝撃とジンネマンへの反発が、やがてバナージの意地と熱とを蘇らせ、恐怖に激しく胸打つ心臓の音が、生への執着を思い出させるのだった。 ギルボアを殺してしまったことで、精神的にボロボロになったバナージ。自分が死ねば・・・などと堂々巡りな思考にハマって鬱状態です。しかし、意外にも懐の深いガランシェール・クルー達。普通仲間が殺されようものなら、その犯人をボコボコにしちゃいそうなものなのになあ~(たまにTVで、外人警官が犯人を集団リンチする場面が流れたりするじゃないですか、あんな感覚) ジンネマンはバナージを張り倒しだけど、腑抜けたバナージに喝を入れるためみたいですしね。ストーリー的には、ありがちなパターンで陳腐すぎ、もう少し工夫は欲しかった気もします。が、一方でジンネマンってただのロリコンオヤジと思ってたけど、意外に良いヤツじゃね?と、見直した部分も。 しかし、バナージのウジウジ状態は読んでて疲れてくるところがありますね。純粋でまだまだ子供なんだとは思うものの、「ああ”?、もう死ねば?」と言ってしまいたくなる苛々部分もあります。はやく成長して一人前になってくれ・・・。 ■彼女には再調整を拒む魂が存在する 4月21日、雨のオーガスタに舞い降りるプライベート・シャトル。それには「月の女帝」マーサが搭乗していた。迎えに来たアルベルトとともにオーガスタ研究所へと向かう。オーガスタでは既に、二号機[バンシィ]の重力下試験をほぼ完了している様子。一号機の実践データをフィードバックし空間機動も大幅に改善したという。 一方、アルベルトは、父と弟をその手にかけた良心の呵責に苛まれ、子供の幻覚を見る状態。そんなアルベルトの様子に気がついたマーサは、たとえ血縁があったとしても、家督を守る責任がある、気にするなと告げる。そして、今度は仕損じるなと無言のプレッシャーを与えるのだった。 所長ベントナと共に、6F監獄へと通される二人。「12」番目の鉄格子、そこには検体としてマリーダが収容されていた。先天的に遺伝子設計された彼女には、薬物などによる再調整は難しいと告げるベントナだったが、マーサは意に介さずマリーダに話しかけるのだった。 マーサのイラスト初登場です。残念ながら虎哉氏のイラストだけで、安彦さんの人物設定画は公開されていません。そもそも、マーサの設定画を安彦さんが描いているかどうかも怪しいところですね。たぶん途中離脱して以降はノータッチのような気がしますし。是非、設定の仕事程度はやってもらいたいのですが、さて読者の思いは伝わるのでしょうか? で、虎哉マーサですが、オリジンでのキシリア系を想像していたので、そんなに違和感はありませんでした。 ストーリーでは直接マリーダに接触してきましたが、ああ、このままマリーダはボロボロに再調整されちゃうのでしょうか? 所長のベントナが拷問嗜好のあるキャラに思えてしまう(設定画はないんですが、ベルセルクでグリフィスを拷問したキャラを脳内変換してます) このままマリーダを殺したら福井さんの小説は今後読みたくなくなるかも。陰惨な話はもういいよ。でも、意外にアルベルトが助け出す展開になるのかも。個人的にはそちら展開を希望します。 ■お前は他人になにを期待しているんだ ジンネマンと二人、夜の砂漠を渡るバナージ。過酷で無慈悲な大自然の前に、コロニーという閉鎖空間で生まれ育った心が竦み上がる。疲弊した心と体を引きずりジンネマンの後を追うが、長くは続かなかった。弱音を吐くバナージに、ジンネマンは厳しい言葉を突きつけるが、その言葉の中には親心に似た優しさが隠されていた。 ジンネマンの背中を追いながら、バナージは出発前のフラストの話を思い出していた。一年戦争時、地球降下作戦に参加し、アフリカで戦った末に捕虜になったこと。収容所で虐待を加えられたこと。戦後、占領軍が故郷を蹂躙したこと。身内を守ることが出来ず、自身の無力を呪った彼らの残された道は、戦い続けることだけだった、と。 世界はあまりにも残酷で、人間はあまりにも無力だ。それを目の当たりにし、自身が今まさに生死の境を漂っている現実。そんな状況でも生き続ける、歩き続ける、立ち止まることは理不尽に対する敗北。だから進む、歩く、今日よりマシな明日を信じて・・・。バナージは心の中で、戦い続け、進み続け、生き続ける意味を、自問自答し歩み続けるのだった。 過酷な二人旅が、バナージとジンネマンとの間を近づける。ここで信頼や世代を超えた友情みたいなものが生まれて今後につながるんでしょうね。 しかし、ジンネマン等の故郷生け贄話は陰惨すぎるね。憎しみが憎しみを呼ぶ連鎖って、あまりにも救いがないじゃないですか。こういう話が核に据えられると、話として重すぎる気がしますね。そんな話を受けて、バナージが抗い続ける意味を自問自答していく展開は面白かったけどね。 この後、二人は砂嵐に巻き込まれて、生死の境・極限状態に置かれるわけですが、さて無事アタールの町へとたどり着けるのでしょうか?それは本誌を読んでのお楽しみということで。 そして次号、新たな登場人物、ガーベイ一家がジンネマン等を手引きします。ラプラス・プログラムの示す新たな座標は「ダカール」!なんと連邦政府の拠点ですよ。そしてマリーダと二号機[バンシィ]の動向も気になるところです。 2008/05/25 shinji
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